居酒屋で経営知識

55.経営者の条件(8)汝の時間を知れ

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
&deco(orange){};原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「第2章を改めて読んでみたけど、時間が他とは全く違う資源で、すべての制約要因になるって言うのはわかっているようで、目から鱗のような話だったわ」

 炭火で焼いたラムチョップを食べ終えた由美ちゃんが話し出した。

「最初のところにあった、『時間は、借りたり、雇ったり、買ったりして増やすことができない』という言葉には、ドキッとしたほどだった」

「確かにそうだね。経営の三要素は『ヒト・モノ・カネ』と言われるけど、それらは借りたり、雇ったり、買ったりして増やすことが可能だし、普段からそうしている。でも、時間ばかりは、いかんともしがたいけど、必須条件なので、基盤要素とでも言えるかな」

「へえー。ドラッカーって、そんな話なの?時間が買えたりしたら、どうなっちゃうのかしら」

「亜海と俺は年の差が12歳あるけど、どんなに頑張ってもこれは変わらない。1日24時間も変わらない。だから、誰にとっても普遍的な制約条件だっていう話なんだ」

「当然って思うけど、どうしようもないものなら前提条件として対応するしかないわよね」

「亜海ちゃんの言う通りだな。だから、ドラッカーは、自分の時間をどう使っているか記録して、何に時間がとられているかを知ることを第一の習慣的な能力としてあげているんだ」

→「したがって、時間を記録する、整理する、まとめるの三段階にわたるプロセスが、成果をあげるための時間管理の基本となる」(P46)
→「ところが、時間は、借りたり、雇ったり、買ったりして増やすことができない」(P46)
→「時間は他のもので代替できない。ほかの資源ならば、限界はあっても代替できる」(P47)
→「時間を管理するには、まず自らの時間をどのように使っているかを知らなければならない」(P47)

「この辺の時間に対する書き方を見ると、人は時間についてよく考えていないということが問題意識としてあるんだろうな。何度も、同じことを違った言い方で繰り返しているように思える」

「確かに雄二の言うように、当たり前になってしまうんだろうな。だから、時間の記録をとるというのも、初めの分析というわけじゃなく、定期的に記録をとって見直すように言っているようだ」

→「時間を管理するには、まず自らの時間をどのように使っているかを知らなければならない」(P48)
→「誰でも事情は変わらない。成果には何も寄与しないが無視できない仕事に時間をとられる」(P50)
→「理由はともあれ知識労働者は上司や同僚に多くの時間を要求する」(P51)

「ふーん。でも、どうやって記録したり診断したりするの?何か、自動記録装置のようなもの?」

「まあ、その辺は今の時代ならスマホなんかで記録していけるアプリがあるようだよ。とにかく、その場で記録するようにせよって言ってるね。会社の役員クラスなら秘書に記録させるということも可能だけど」

→「知識労働者が成果をあげるための第一歩は、実際の時間の使い方を記録することである」(P57)
→「最低でも年2回ほど、三、四週間記録をとる必要がある」(P57)

「こう書かれていて、ベタに記録をとっていくことだ。その上で、時間を浪費する非生産的な活動を見つけて排除していく方法が三つあると言っているよ」

→「記録を見て日々のスケジュールを調整し、組み替えていかなければならない。しかし、半年も経てば、再び仕事に流されて些事に時間を浪費させられていることを知る」(P58)
→「第一に、する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てることである」(P58)
→「第二に、他の人間でもやれることは何かを考えることである」(P59)
→「第三の方法は、自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除することである」(P61)

「この辺はまた議論になるんだろうな。特に、時間浪費の原因も整理されているから、次の読書会が楽しみになってきたよ」

→「第一に、システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費がある」(P64)
→「第二に、人員過剰からくる時間の浪費がある」(P66)
→「第三に、組織構造の欠陥からくる時間の浪費がある。その兆候が会議の過剰である」(P68)
→「第四に、情報に関わる機能障害からくる時間の浪費がある」

「だんだん、指摘が厳しくなってきている気がするわ。人員過剰は切り捨ててるし、なんと言っても、会議を組織構造の欠陥の表れだって言っているところなんて、気迫すら感じるわね」

「確かに。会議とは、組織の欠陥を補完するためのものだという指摘がすごいね。現代においてすら、会議が業務の中心になっている企業が多いんだから、組織のデザインを根本的に変える必要があるのかもしれないよ」

「ラムチョップで腹が一杯になったら、予習しちまったな。来週、あいつらがどんな意見を持ってくるんだろうな。さあ、2章もほとんど終わったんだろ。ビールをもう一本行こうぜ。亜海、頼むよ」

「はーい」

(続く)


《1Point》
「経営者の条件」ドラッカー名著集1 上田惇生訳 ダイヤモンド

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 箇条書きとして整理されているところだけ、改めて並べてみます。

【時間を浪費する非生産的な活動を見つけ排除する方法】

第一に、する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てることである
第二に、他の人間でもやれることは何かを考えることである」
第三の方法は、自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除することである

【マネジメントと組織構造の間違いに起因する時間の浪費】

第一に、システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費がある
第二に、人員過剰からくる時間の浪費がある
第三に、組織構造の欠陥からくる時間の浪費がある。その兆候が会議の過剰である
第四に、情報に関わる機能障害からくる時間の浪費がある