居酒屋で経営知識
44.安全性分析(当座比率)
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長
「おいしー!」
いつしかノンベイ仲間となった由美ちゃんが、雪中梅に歓声を上げている。
「ニシンって身欠きニシンしか食べたことなかったけど、普通の塩焼きもあるのね」
「由美っペ。うちでは裏メニューだよ。まあ、生ニシンが入るってのは珍しいけどね」
「大将。珍しいのは裏メニューにしておいて欲しいですね。確かに、こんなにふっくらしたニシンなんて珍しいですね」
「ニシンの塩焼きを出すといい反応が多いんですよね。定番にしたいところですが、仕入れが大変なんで当分裏メニューでしょうね」
「そういえば、ジンさん。流動比率が必ずしも短期安全性を示していないことがあるって話の続きだけど、裏メニューがあったわよね。当座比率ってやった記憶があるわ」
「裏メニューねえ。確かにそうかもしれないね。流動比率が必ずしも安全性を反映しない大きな原因に棚卸資産があったよね。これらの必ずしもすぐに現金化しないものを除いた資産が当座資産だったよね」
「ええ。流動資産のなかでも、現預金や受取手形、売掛金、売買目的の有価証券などね」
「その当座資産を流動比率の計算の分子に持ってくるのが当座比率というわけだ」
「というと、
当座比率(%)=(当座資産/流動負債)×100
ということね。棚卸資産がないから、意図的に在庫を増やして比率を良くするなんて言う操作はできなくなるわけね」
「より換金性の高いものが当座資産だから、流動資産よりは厳密と言えるかもしれない。とはいえ、これも業種やその企業の取引形態によってばらつきが出てしまうのは同じだけどね」
「それは、財務諸表分析が、どうしても四半期とか半期・年度の期末時点の状況でやらざるを得ないからじゃないかしら。たぶん、分析の限界よね」
「まあ、そういうことだろうね。家電量販店などで、決算セールをしたりするけど、あれで、店内在庫を減らし、現預金や売掛金が増えるので当座比率がグッと良くなるだろうね」
「そうすると、どんな営業の流れで取引をしているかを見ないと本当のところはわからないということね」
「分析はあくまで目安だからね。ただ、突出していたり、他と違うところをよく調べてみると強みが見えたり、場合によっては意図的な操作を見つけられたりするので、使い方を考えた方が良いね。何でもそうだけど、分析結果や指標を盲目的に信じてしまわないことが重要だよ」
「はーい。短期安定性はブレが多いということね。でも、短期だから仕方が無いのかもしれないわ」
「そうかもしれないね。まあ、特に上場企業などは、決算の数字を良くしようとあれこれ知恵を絞ることになるから、それを分析する方もよく考えて見ておかないといけないかもしれないね」
(続く)
《1Point》
・当座比率(%)=(当座資産/流動負債)×100
【改善策の具体的な例】
基本的には先週の流動比率と同じですが、加えるなら棚卸資産を製品として販売し現金化することですかね。
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