166.診断士試験・内部統制

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

 原島さんの会社の田中君から週末に時間が欲しいとの連絡があったので、自宅で待つことにした。
 
「おはようございます。お休みに申し訳ありません。」

「なんのなんの。さあ、どうぞ」

 リビングのテーブルは勉強会にも使えるように大きめのものにしてある。

「コーヒーでいいかな」

「そんなにお気遣いなく。社長に叱られます」

「コーヒーは俺の趣味だから淹れさせてくれよ」

 最近アイスコーヒーばかりだったので、久しぶりにペーパードリップのホットコーヒーを淹れてみた。
 
「いい香りですね」

「近所の焙煎やで昨日煎った豆を使っているから一番いいタイミングだろうね。さあ、どうぞ」

「え?ブラックなのに甘みがありますね。おいしいです」

「よかった。俺も酒だけじゃないって、原島さんに言っておいてくれよ。さて、さっそくだけど、まずは1次試験のおさらいを続けようか。気になった問題は他にあった?」

「やっぱり、企業経営理論なんですが、粉飾決算で倒産した企業の事例から、コーポレートガバナンスについての出題がありました」

「どれどれ。なるほど。粉飾決算に対してどう防ぐ仕組みをつくるかということだろうね」

【企業経営理論】2011年度1次試験

第18問

企業経営者が、損失を隠す粉飾決算を行い、投資を呼び込むために株価をつり上げ、そのことが公表されて倒産するに至るという事件が起きることがある。

このような場合、投資家、顧客、従業員、地域社会の他、利害関係者に大きな損害を与える可能性があるとともに、資本主義経済システムへの信頼そのものを失わせてしまう可能性がある。

有効なコーポレートガバナンスの仕組みに関する記述として最も適切なものはどれか。

ア 株式市場に上場し、より多くの株主に株式を分散して保有してもらい、多様な株主による株主総会でのチェック機構を強化する。

イ 企業の会計基準を時価会計にあらため、外部監査会社による積極型会計(aggressive accounting)を法的に義務づけ積極的に情報の開示を促進させる。

ウ 内部統制と内部統制報告書の作成を促進し、情報の開示や説明責任の明確化などを図る必要がある。

エ 万一こうした損害が発生した場合、その被害を最小限に抑えるために、一定以上の資産をデリパティブなどのリスク管理資産として留保しておくよう義務づける。

「そうなんです。粉飾決算をしないようにする仕組みなので、エの資産を留保しておくというのは当たらないとはわかったんですが、アの株式公開やイの会計基準を変えて情報開示を促すというのとウの内部統制による情報の開示との違いがよくわからないんです」

「正解はウの内部統制だね。まずは、内部統制というのがどういうものかを知っていないと自信を持って答えられないかもしれないね。内部統制というのは、元々が粉飾決算を防ぐ方策の一つとしてできたと言うことなんだ。ただし、現在の内部統制は業務自体の有効性や効率性に加えコンプライアンスに関するプロセスも対象となっている。そのため、コーポレートガバナンスを有効にする要素の一つとなっているんだ」

「それでは、アやイはどうなんでしょうか」

「株式を公開しても、企業の中での日常的な業務プロセスや会計処理をチェックするのは不可能だよ。結局は、最終的な財務諸表などをチェックするしかないよね。同様に会計の仕組みを変えたとしても、途中のミスや意図的な操作をなくすことはできないので、内部統制という業務プロセス上でのチェックの仕組みが必要なんだ」

「そういうことですか。いくら情報を公開しても、その情報自体に間違いや粉飾があればどうしようもないということなんですね」

「問題としてはそうだろうね。ただし、内部統制もあくまで内部での仕組みだから、組織としての操作やトップが粉飾を指示すれば何のヘッジにもならないということには注意が必要だよ」