151.マネジメント基礎講座:コンティンジェンシー

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

「へい、いらっしゃい。毎度」

「いらっしゃいませえ。ジンさん、今日も生でいいですか?」

「もちろん。もう夏の気配だから、ますます生ビールだね」

「でも、ジンさんって、日本酒党だって言ってましたよね。それでも、まずはビールっていうのが不思議だったんです。他のお客さんもそうですけど」

「亜海ちゃんはまだ若いからなあ。まあ、とりあえずビールっていうのは、みんな習慣になってるんだろうね。日本酒とか、ワインって注文すると、様々な味や値段があるけど、日本の居酒屋でビールって言えば、ほとんどが国内の4大メーカーのもので、間違いが無いからね」

「あ、そっかあ。4大メーカーって、えっと、アサヒとキリンとサッポロと、えーっと、あ、サントリーだ」

「お、亜海ちゃん、すごいね。飲まないのに知ってるとは」

「えへへ。ここで働いてますから、しっかり覚えておかないとお客さんとお話できませんから」

「おおー、プロだねえ」

「あ、でも、ジンさんの飲んでるヱビスもありましたね」

「ハハハ、ヱビスはサッポロビールの商品だよ」

「え?そうなんですか。知らなかった。メモしておかなくっちゃ」

「おい、随分楽しそうだな。俺も入れてくれ」

「鳶野さん、いらっしゃい」

「あー、びっくりしたあ。鳶野さんっていつも急に現れますよね」

「亜海。心にやましいところがあると驚くんだよ」

「別にやましいことなんてありませんよーだ。ビール入れてあげませんからね」

「おおー。亜海も言うようになったねえ。昔の由美みたいだな」

 雄二が入ってきて早々、亜海ちゃんをからかっている。

「雄二、由美ちゃんに聞かれるぞ」

「おおーこわ」

講座が始まってすぐに質問が来た。

「先日、親会社の研修に参加したとき、経営計画におけるコンティンジェンシー・プランを策定するという話がありました。リーダーシップの研修でもコンティンジェンシー理論を習ったのですが、共通する理論のようなものがあるのでしょうか?」

簡単に言うとこんな内容だ。

今回は、この質問に答えることで、講座の内容にすることにした。

皆さんは「コンティンジェンシー」という言葉を普段から使いますか?

企業内で使われるコンティンジェンシーについて、質問がありました。その質問の回答を考えてきましたので、この機会に皆さんにもシェアさせていただきます。

(1)コンティンジェンシー・プラン(経営計画)
(2)コンティンジェンシー理論(リーダーシップ論)

親会社の研修では、コンティンジェンシーという言葉を使ったものが二つカリキュラムにあるようですね。

もしかすると、その他にも単純に単語として使っていることもあるかもしれません。

単語として考えると、
[contingency]
・偶発性.不確定性.不測の事態.(imdas)
・偶然性。また、偶然の出来事。(デジタル大辞泉)
となります。

日常的に「コンティンジェンシーを検討しよう」と言うとき、「代案を考えておこう」程度で使われているのかもしれません。

ただし、代案とは主に第二案であって「不測の事態」や外部環境の「様々な不確定性」に対して、経営的な判断をするものにはなっていませんね。

そのため、日本語に訳すときに「不測事態対応」や「条件適合」「状況に応じた複数の」などとして考え直してみる必要があるのではないでしょうか。

カタカナ語、特に、日常で使わないような用語は、思考を停止してしまうことがありますので注意が必要です。

では、それぞれの実際を見てみましょう。

(1)コンティンジェンシー・プラン(経営計画)

訳語としては、不測事態対応計画が一般的のようです。

長期・中期の経営計画(もちろん短期もですが)においては、目標達成に向けて最も確率が高いと予測される前提条件に基づいて考えられています。

ただし、当然のことですが前提条件は思ったようにはなりません。

特に、期間が長くなる中期経営計画(3年から5年が主流)では様々な変動要因が考えられます。

これらのうち、影響の大きいものについては、あらかじめ複数のシナリオを準備していなければ変化に対応できないことになってしまいます。

この代替の複数の計画(状況に応じた対応計画)を「コンティンジェンシー・プラン」と呼んでいます。

例えば、

・為替レートが一定以上の円高になった場合の対処法を織り込んだ計画をコンティンジェンシーとして決定しておく。

・原材料価格の高騰となった場合の影響に応じて、購買計画(調達計画)の代替案を複数準備しておく。

・大地震で自社工場が機能停止した場合の生産対応計画を各工場毎に作成しておく。

などがコンティンジェンシー・プランと考えられます。

(2)コンティンジェンシー理論(リーダーシップ論)
*リーダーシップ論自体は別途取りあげます。

リーダーシップ論のおけるコンティンジェンシー理論とは「状況理論」の一つとされます。

F・フィードラー(米)が唱えた「フィードラー理論(Fiedler leadership model)」が典型と言われています。

簡単に言うと、リーダーが置かれた状況に応じてリーダーシップのパターンを選択しようという理論です。

フィードラーが挙げた状況の要因(規定要因)は以下の3点となっています。

 1)リーダーとメンバーの人間関係
 2)仕事の目標と仕組みの明確さ
 3)職位の権限

これらの組み合わせの実証研究を行い、タスク志向型と人間関係志向型のリーダーシップのスタイルをパターンとして選択して対応できるように提唱したものです。

「ふーん。コンティンジェンシーなんて、日本人に発音がしづらい言葉を使うところが、経営学者のお粗末なところだな。何か、ちゃんとした日本語の用語を作れないんかね」

「まあ、雄二の言う通りかもな。翻訳が難しいとすぐにカタカナとか略語が正式用語になってしまうところがあるな。それにしても、このコンティンジェンシーという言葉はあまりに酷い。お手上げですという感じだな」

「お、ジンが賛同したか。何でも真面目に捉えるお前のことだから、下手な翻訳で誤解するより良いって言い出すのかと思った」

「言葉は重要だよ。本来なら、日本的な意味を付け加えた用語を作ったら良いと思う。何でもかんでもアメリカでできた理論が良い訳じゃあないしね。アメリカのビジネス理論を議論するなら、英語でやるしかないのかもしれない」

「俺は、英語を勉強するより、うまい日本酒を飲みながら、日本型経営を突き詰めたいがな」

「それは、雄二の方針だからいいんじゃないか。俺も、そろそろ日本酒にするか」

「ジンさん、鳶野さん。もう、飛露喜は無くなりましたからね。他のにしてくださいよ」

「・・・大将、ホント?」

 雄二とハモった(^_^;)
 
(続く)

《1Point》

本来コンティンジェンシー理論とは、最善のものは一つであるという「普遍理論」に対抗して出来上がった理論であり、上記二つに限ったものではありません。

・組織論
・戦略論
・動機づけ理論
・経営計画
・リーダーシップ論
などについて理論化されています。