145.BCP再考

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

「あ、ジンさん、いらっしゃい。お疲れ様でした」

「大将、ご無沙汰してしまいました」

「いえいえ、ジンさんの会社も今回の震災で大変だって聞いてましたから」

「幸い会社としての直接の被害は無かったんですが、取引先が大変な状況だったのでその対応でバタバタしてますね」

「ジンさん、大丈夫だったんですね。みんなで心配していたんですよ」

「亜海ちゃん、ありがとう。みんなのことは雄二から無事だって連絡を受けていたんで安心はしていたんだけどね」

「まあまあ、まずはいつもの席にどうぞ。何はともあれ、落ち着きましょう」

 震災の影響も東京では落ち着いてきている。
 ただし、連日のニュース報道で世の中が精神的に落ち込んでいるというような気がしている。

「花見やお祭りまで中止が続いていますからね。もちろん、被災した人たちのことを考えると、そんなコトしているなら、支援金を送るなり、ボランティアに行くなりすべきだという意見に反論はできないですがね」

「ある程度はやむを得ないですが、日本全国が精神的に停滞してしまうことが恐ろしいです。まずは、被災していない人々がしっかりと仕事をして、基盤を作り直さなければ、支援さえできなくなってしまいます」

「うちも今は東北地方の酒蔵の酒を中心にしてます。うちができることと考えたら、そのくらいしか無いんです」

 会津の酒「天明」がカウンターに載っていた。
 
「天明行きますか」

「もちろんです」

「近藤さん、いらっしゃい」

 建設会社に勤める常連の近藤さんがやってきた。
 
「お、ジンさん、やっと出てくるようになったんだね」

「近藤さんも大変でしょう」

「まあ、私は直接現場へ行くわけにもいきませんので、連絡役に徹してますよ」

 天明を冷やで飲み出した。

「ところでジンさん。2年くらい前でしたか、BCPの策定を手伝ってもらいましたよね」

 2本目の徳利にかかる頃、近藤さんが思い出したように言い出した。

「そうでしたね。あの頃は、新型インフルエンザの脅威から地震などの天災も含めたBCPを作るのがはやりましたね」

「うちは、それのおかげで随分助かったと思っているんですよ。特に、資材などの分散と緊急時の優先的な手配契約が残っていたんで東北地方への救援も早い時期に開始できたそうです」

「さすが大義建設さんですね。トップがしっかりしていると違いますね。今回、実は、BCPで策定した情報管理や業務再開のステップが全然ダメだったという意見が多いんです」

「一つ、はっきり失敗したのは社員の安否確認システムだったらしいです。私は気づかなかったんですが、東北地方や東京でも安否確認が全くできず、結局、公衆電話などを使って関西支社へ第一報が入ったらしいです」

「それも大騒ぎになってますね。メジャーな安否確認システムは、携帯や自宅の固定電話、メールを中心にしていたので、災害の中心だった東北地方だけじゃなく、本社が多い東京でも電話が使えず、登録も確認もできなかったらしいです」

 想定外と盛んに言われてはいるが、想定内であったはずの地域でも対応できなかったところは無かったのだろうか。

「今更と言わずに、自社のBCPを見直すなら今ですね。地震はこれで無くなったわけではないですから、目の前にある実績をもとに新たなBCPを作る必要があると思います」

(続く)

《1Point》
 確かに2年前、新型インフルエンザを契機に各社ともBCP対策を練ったはずです。
 
 起こってしまったとはいえ、落ち着いてきた企業は再度見直すべきだと思います。
 
 私もビジネスリスク研究会という診断士の研究会に所属しており、2年前にセミナーやマニュアル作り、WEB講座などを行ってきました。
 
 せっかくですので、この機会に再度見直してみたいと思います。
 
「事業継続」をテーマとして私が書いたBCP講座は以下のリンクに残っています。前半はパンデミック対策で後半は地震災害となっています。
http://sme.fujitsu.com/tips/enterprise/

*すでに上記の講座は終了し、削除されています。なお、この文章は、2011年の4月か5月に書いたものです。流石に、東北の震災は精神的なショックが大きく、当時、毎週書いていたメルマガも全然書く気になれなかったのを今更ながら思い出します。(2019/10/05)