136.組織論の基本的考え方

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求
めている。

(前回まで:昨年から原島社長の会社でマネジメント基礎講座を行っています。科学的管理法から人間関係論、モチベーション理論などをテーマにしてきました。前回は、リーダーシップへの考え方?の概論でしたね)

「へい、いらっしゃい。ジンさん、毎度」

 大将のだみ声も例年通り。

「ジンさん、今年は嫁さんでも見つけないとな」

「大森さん、新年早々、その話は勘弁してください」

「そうはいかん。なあ、近藤さん。ジンさんみたいな人が、早く結婚して子供を作ってもらわないと、我々が大変だ」

「まあまあ、大森さん。ジンさんには意中の人がいるんだよ。焦らなくても、大丈夫。ねえ、ジンさん」

「いや、あの・・・近藤さんもきっついなあ」

 まあ、いつものみやびだ。

「いらっしゃい。あ、由美っペか」

「叔父さん。由美っペか、はないでしょ。れっきとしたお客さんなんだから」

「まあ、そうだな。寒いけど、ビールでいいのかな」

「ええ、そうね。瓶ビールにしておくわ」

 由美ちゃんとは、明日の基礎講座の打ち合わせをすることになっているのだ。

「かんぱーい」

「由美。今、ジンさんのお嫁さんになる人の話をしていたんだよ」

 大森さんが蒸し返す。

「え?ジンさん、結婚するんですか」

「ま、まさか。来て早々、大森さんに苛められてるんだ」

「そうか。びっくりした」

「由美も早くしないとな」

「大森さん。何の話をしてるんですか」

 当の大森さんはニヤニヤしながら、徳利を傾けている。

「由美ちゃん、明日の打ち合わせをしておこう。大森さんに付き合ってると酔っぱらってしまうから」

 ちょっと上目遣いの由美ちゃんと目があったが、鞄から書類を出すために目をそらしていた。
 

 今日の講座は「組織論」とホワイトボードに書き出した。

 これまで「人」をどう考え、どうしていくかといういわば「人の管理」の変遷を見てきました。

 しかし、組織が大きく、複雑になるにつれて個々の「人」の管理という視点だけでは対応しきれなくなってきました。そこで出てきたのが、「人」の集合体である組織の管理という考え方になります。

 それでは、ここでも組織論の基本を見ていきましょう。

(1)組織の成立

 組織がどのように成立するかという理論の代表格として、伝統的組織論とバーナードの組織論を取り上げます。

【伝統的組織論】

 伝統的組織論においては、組織の成立過程として以下のサイクルを提示しています。

 ・職能分割:一人で出来る仕事の量には限界があるため複数の人に仕事を分割して割り振る分業へ向かいます
    ↓
 ・職務明確化:分割された仕事(職務)の内容を明確化します(職務記述書)
    ↓
 ・部門化:分割した職務を似たもの同士でグループ化する過程です
    ↓
 ・階層化:部門化された組織を管理職と現業職・一般職のように階層化する過程です

 このようなサイクルを繰り返しながら組織が形成されていくという理論となります。

【バーナードの組織論】

 近代組織論の創始者と言われるチェスター・バーナード(米国1886年~1961年)によって唱えられた組織論です。

 組織:2人以上の人々の意識的に調整された諸活動ないし諸力のシステム

 →つまり、複数の人間が意図を持って集まり、意識的に活動するものが組織であると言っているようです。

 組織の基本要素:ただし、その人の集まりには以下の3つの基本要素が必要であると指摘しています

 ・共通目的
 ・貢献意欲
 ・コミュニケーション

 つまり、組織には共通する目的があり、組織メンバーは自らの能力に応じて組織に貢献する意欲を持ちながら、お互いに緊密なコミュニケーションを取ることによって成立するということになります。

 この3つの要素は、単なる集団と目的集団(組織)の違いを明確にする基本要素であると思います。この視点で、自分の所属する組織を眺めてみると、問題点や強みが見えてきます。

(2)組織の基本原則

 組織の基本原則として以下の4原則が上げられます。

 ・専門化の原則:分業し専門化することで効率が高まる
 ・権限・責任一致の原則:担当する職務の権限の大きさは責任と一致しなければいけない
 ・統制範囲の原則:一人の管理者が効率的に統制できる範囲は限られている
 ・命令統一性の原則:部下は常に一人の上司のみから命令を受けなければいけない

 ただし、現在では古典的な原則として、捉えられています。多能工化やプロジェクト組織など、これらの原則に反したような組織運営がなされていることに気づくと思います。

 それでは、組織の基本原則を現在の自分の所属している組織に当てはめて、具体的に考えてみてください。
 
 原則は守られていますか。何が原則と違っていますか。
 
 次に、バーナードの基本要素もグループ内で話し合ってみてください。
 
 いつも通り、グループディスカッションに入った。

 
「今日のグループディスカッションは、随分盛り上がったわよね」

「それだけ、組織というものに問題を抱えていると言うことかもしれないね」

 講座後、由美ちゃんと反省会をしている。もちろん、みやびでだが。
 
「組織の基本原則では、特に命令統一性の原則の話題が多かったみたいね」

「どこでも出ていたね。古典と言われる原則なので、もう現在の組織には原則にならないと思うんだ。外部環境や事業自体が激しく変化する時代では、固定化した組織で対応すると言うこと自体が困難になっているはずだからね」

「そうよね。特に新しいプロジェクトでは、組織の枠を離れて、プロジェクトチームを作ると言う話が多かったわよね。でも、そこでいろんな問題も起こっているようだったわ」

「ツーボスという問題は常に起こるんだ。本人の評価も、多くは固定化した組織の上長が行うことが多いと、本来はプロジェクトチームでの活動が主要であっても、正当に評価されない可能性があるよね」

「難しい問題ね。次の宿題も随分出たみたい」

「次回は、典型的な組織形態の説明をして、それぞれのメリット・デメリットを見ていこう」

 定番の菊正宗の熱燗で暖まってきた。
 
(続く)

《1Point》
・バーナードの組織の基本要素

 ・共通目的
 ・貢献意欲
 ・コミュニケーション

 実は、この3つの基本要素は私にとっての基本原則でもあります。
 単純なようで、他の多くの理論を包含した正に基本要素ではないかと考えています。

 中小企業診断士の2次試験でも、組織の問題になるとまず、この3つの要素で考えるようにした記憶があります。

 大きな組織も小さな組織でも、同じように考えることが可能です。ぜひ、自分の所属する組織に当てはめてみてください。