135.リーダーシップ概論

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

「明けましておめでとうございます」

 新年の開店初日にみやびに集まることになった。

「みなさん、改めまして、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」

「かんぱーい」

「新たな年がスタートですね。新年祈願を済ませてきましたので、心置きなく飲んでください」

 大将が若干意味不明の挨拶で普段の宴会となった。

 おせち料理風のオードブルが並び、千歳鶴と亀齢の一升瓶を並べているのがみやびの新年会らしい。

「この鶴と亀の日本酒コンビが新年に相応しいですねえ。なにはともあれ、目出度さを感じます」

「他にも縁起のいい名前の日本酒はありますが、私は、これが好きなんですよねえ」

 得意先回りを終えた原島さんも合流した。挨拶回りで忙しい時期ではあるが、研修は予定通り行うことになっている。

「北野。明日の研修も頼んだぞ。確か、リーダーシップについての特別講義だったよな」

「特別講義というわけではないですが、一度中間まとめのつもりです。リーダーシップについては、特に気になるところもありますので、新年の頭ごなしにもいいでしょう」

 千歳鶴を大ぶりのぐい呑みであおりながら、概略を確認した。

 今年はどんな年になるだろう。

 研修のメンバーの中には、挨拶回りの出張からそのまま駆けつけた人もいた。忙しいと言いながら、ほとんど欠席者がいない。

 次第に積極性が高まってきているのを感じてきている。

 みなさん、明けましておめでとうございます。

 新年でもありますので、ちょっと寄り道をしてみたいと思います。お付き合い下さい。

 組織による企業活動の進展に対して、生産性を向上させるために開発された「科学的管理法」。

 その非人間的な部分を解消し、より高次の管理法が必要であることを証明した「人間関係論」と個人の心に着目した「モチベーション理論」。

 これらの研究により人間的なマネジメントに繋がっていったのですが、一方で社会の変化は激しくなり、企業同士や新たな価値観との競争はより激化することになりました。

 同時に、企業をはじめとする組織は巨大化しています。

 たとえ、一企業が小さくても、置かれている立場は、業界や法律・監督官庁のつくる巨大な連関の中にあり、それらの影響を免れられません。

 過去の成功体験の上に成り立つ既存の企業であればあるほど、急速な変革を舵取りするためにリーダーの存在が必要とされます。

 ところが、リーダーシップは企業のトップ(経営者)だけに求められるのではなく、ミドルマネジメントといわれる部課長級の組織リーダーが担わなければいけない時代となっています。

以下の話をどう思われますか?

 昭和30年代の中頃、山岡壮八著「徳川家康」が、経営者の理想像として世間で広く読まれていた頃、本田宗一郎は山岡壮八に4回も質問状を出した。

「江戸城を造り、その秘密を守るために多数の人々を皆殺しにし、博多や堺の町人の自由な貿易を禁止し、独占的な朱印船貿易を腹心や妾の名義で運行した。多数の人間を犠牲にし、天下国家を我が家のものとする家康のどこがよいのか」

 返答はあったが、本田宗一郎を満足させる確かな答えは無かったそうである。

 そういえば、我が家にも山岡壮八の徳川家康が並んでいました。ハードカバーの箱入りで何十巻か本棚に並んでいましたね。

 この逸話は、リーダーシップというものは見る人の価値観によって評価が変わるということを示そうとしたものです。

 リーダーシップに関する研究や理論も数多くあります。企業研修などでも、リーダーシップ研修というのが盛んに行われているようです。

 しかし、リーダーシップの類型化を行い、どのような状況下では、どのようなリーダーシップが効果がありますと言われて、そこから理論的にリーダーシップを発揮するということがあるのでしょうか。

 リーダーシップについて、P.ドラッカーは「リーダーシップは創造できるものではない」(注1)と言います。

 では、企業は研修を通して何をすべきなのでしょうか。

 リーダーシップをもった人間がやってくるのを待つしかないとすれば、企業は何をもって成果を上げていけばいいのでしょうか。

「仕事とは論ずべきものではなく、実行すべきものである」(注2)というように、リーダーシップの目指すもの(組織の目標)を実行することが、平凡な人間がリーダーとなる唯一の道ではないかと思います。

 「リーダーシップとは、人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである。」(注3)

 以下にリーダーシップ研究として有名な理論を挙げてみます。

 後日、これらの内容も確認しようと思いますが、リーダーシップを必要とするのは、すべての働く人達だ、ということを考えてください。

 誰でもがリーダーになれるし、ならなければいけないのが現在の組織運営の要求ではないかと考えています。

 今日は、リーダーシップを発揮している状況とはどんな状況かということを話しあってください。そして、リーダーにとって、必要な条件を挙げてください。

 リーダーシップ理論のまとめの時に、確認しますので、グループで列挙して提出してください。

【主要なリーダーシップ研究】
○資質特性論(人間特質論)

 リーダーシップは、個人の人相、骨格、性格など身体的、心理的な資質によって決まるとする研究。
 「偉大なるリーダーには共通する特性がある」という古代ギリシャ時代からの前提であった。

 リーダーシップの類型(レヴィン)
 (1)専制的リーダーシップ
 (2)自由放任的リーダーシップ
 (3)民主的リーダーシップ

○行動理論

 リーダーシップをリーダーの働きかけとメンバーの反応という相互作用として捉えた研究。

 →ロバート・プレーク&ジェーン・ムートン「マネジアル・グリッド」
  三隅二不二「PM式リーダーシップ論」

○状況理論

 リーダーシップは、リーダーとメンバーの関係に加え、状況の変化によって変わるとする研究。

 →ハーシー&ブランチャード「SL理論」

引用:「現代の経営(上)」ドラッカー名著集(2)(2006年上田惇生訳 ダイヤモンド社)
(注1) 同書P220
(注2) 同書P222
(注3) 同書P222

 
(続く)

《1Point》
・リーダーシップ理論は改めて解説の機会がありますので、今回は概論としました。

 リーダーにとって重要な点とは、「真摯さ」「Integrity」という言葉を調べてみてください。

 ドラッカーもこの言葉を特別な言葉として使っているようです。