134.次の展開へ向けて

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

(前回:マグレガーのX理論・Y理論を学びました。現代においてはY理論に基づいた動機づけを考えることが必要です)
 
 師走も最終コーナーを曲がり、新年への準備に入り出した。
 
 既に納会を済ませ、ほろ酔い気分で町を歩いている集団が目につく。
 
 謹賀新年の張り紙や門松が出されている店も目につく。気分はすでにお正月というところか。
 
「いらっしゃい。ジンさん、毎度」

「大将。いつまででしたっけ?」

「うちは今日が仕舞いです。明日は大掃除をする予定なんですよ」

「やっぱり今日が最終日ですね」

「いらっしゃい。鳶野さん、原島さん、お揃いですね」

「よお、ジンも早いな」

「私も到着」

 最終日だということで、みんな集まってきた。雄二、原島さん、由美ちゃんといつもの常連、大森さんと近藤さん。
 
「皆さん、お揃いですね。今日は最終日ですので、在庫一掃で出させていただきます」

 焼き魚、煮物、焼き鳥、酢の物や刺身までが順番にカウンターに並べられた。
 
「うわー、いつも注文していないものが出てくると新鮮ね」

 由美ちゃんが声を上げた。

「おいおい。少し前まで、みやびの看板娘がすっかり客になってるじゃないか」

「えへへ。でも、今年は激動の年だったわ。今の会社に入ったことも、原島さんの会社で研修を始めたことも、予想外だったし、それぞれ大変だけど勉強になっている」

「そうだ、そうだ。由美がここを辞めて就職すると聞いたときは、すぐ戻ってくるんじゃないかと思っていたからな」

「大森さん。それって、私に向いてないって思っていたってこと?」

「違う、違う。この店から由美がいなくなることが信じられなかったんだ」

「じゃあ、許してあげる」

 いつものように賑やかな年末を迎えている。日本酒も、各地の地酒が振る舞われた。

「獺祭、清りょう、智則、四季桜、上喜元、〆張鶴、菊姫、大雪渓、水尾、そして定番菊正宗と。すごいなあ」

「喜んでもらえればありがたいですが、それぞれ、残り物になりますので、飲んでしまってください」

 贅沢な飲み会が盛り上がる。

「よお、ジン。原島さんの会社の研修だけど、年明けはどうするんだ。今年は動機づけ関係で終わったが、次のテーマは決まっているのか」

「そうだ、北野。俺も聞いておきたいな」

 原島さんも乗り出してきた。
 
「そうですね。次は組織論などの詳細に入るのですが、その前に次回になりますが、リーダーシップについての概論を入れるつもりなんです」

「え?その話、初耳ね。リーダーシップ理論は先のテーマだったような記憶があるけど」

「由美ちゃん、その通りなんだけど、前回の動機づけ理論の後のディスカッションで動機づけをするリーダーの問題が出ていたんだ。リーダーにふさわしい人がいないとか、まずリーダーを創り出す研修が必要じゃないか、というような議論になったんだ」

「北野。それは、私も気になるな。私自身の資質を問われているような話じゃないか」

「原島さん。そこのところが、この話を入れようとして理由なんです。リーダーとは、単純に社長や組織の上司を言うのかという点もあります」

「ん?どういうことだ」

「原島さん。ラグビーの試合を思い出してください。試合に勝つために、ポイント、ポイントでチームを引っ張っていくのは誰でしょうか?」

「お前の言いたいのは、監督ではないということか?確かに、試合が始まれば、監督の指示というのは局面で受け取ることは難しい。キャプテンやその時、ボールを持っている選手が試合を組み立てると思うが」

「原島さん。やっぱり伝説のキャプテンだ。今言った、『ボールを持っている選手』がその局面でのリーダーになるという点が重要だと思うんです」

「うーん、なるほど。ボールを持っている選手か。それでは、誰でもリーダーになる必要があるということなのか」

「その辺の考え方を一度投げかけてみたいんです」

「それは、興味があるな。知識より、みんなの認識に訴えかける話がそろそろ欲しいと思っていたんだ」

 みんなが頷いた。

「ジン。お前のラグビー型経営論がお披露目されるのか」

 雄二がニヤニヤしながらつぶやいた。

「いや、その一つではあるけど、全体は基礎知識だから、自分の考え方を押しつける気はないさ」

 リーダーとは何か、という話で盛り上がりながら、今年最後のちゃんこ鍋で締めた。

「じゃあ、皆さん。よいお年をお迎えください」

 大将が、暖かなみやびの明かりを背にして、帰途につくみんなに深々と頭を下げた。
 
「良いお年を」

 
(来年へ続く)

《1Point》
 リーダーシップ理論と言うものも存在しますし、リーダーシップ研修は、企業研修の必須項目とも言えるでしょう。
 
 もちろん、リーダーとは、管理者と同じではないということはおわかりのことと思います。
 
 だからこそ、研修などで身につけさせようとするのでしょう。
 
 次回、総論になりますが、リーダーもしくはリーダーシップについての考え方をテーマに入れるつもりです。
 
 新年の第1回目ですので、ふさわしいのでは?と思ったのです。