133:マグレガーのX理論・Y理論

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

(前回:モチベーションの理論のうち、マズローの欲求5段階説とハーズバーグの動機づけ・衛生理論を紹介しました。)
 
「いらっしゃい。ジンさん、毎度」

 店内は忘年会のシーズンらしく賑わっている。さすがに、大将も亜海ちゃんも忙しそうだ。

「ジンさん、お通しの代わりに餅をどうぞ」

 磯辺焼きが出てきた。

「正月の先取りみたいですね」

「今日は正月用の餅をついたんですよ。それで、お裾分けでもないですが、お客さんに出しているんです」

「そうかあ。もうお正月ですねえ。早いなあ」

 香ばしく焼けた餅を食べながら今年を振り返ろうかと思っていると、雄二がやってきた。
 
「お、餅じゃないか。大将、俺も頼むよ」

「鳶野さん、いらっしゃい。もちろんですよ」

 いつものカウンターに並んで餅を食べている姿は、結構絵になるかもしれん・・・
 
「ところでな、ジン。前回のマズローやハーズバーグの話はどうなっていくんだ。要は、段階を追って表面上の環境とか、それこそ直接の給料などを満足させていくことで、個々人にやる気を出させるということだったよな。やる気を出せば後はうまくいくってことか」

「まあ、そうは問屋が卸さないというのはわかるよな。その前に、もう一つのモチベーション理論があるんだ」

「ん?まだあるのか」

「X理論・Y理論と言って、マグレガーという学者が提唱したものだ」

「XとYなんて、数学みたいだな。変数か?」

「・・・あ、なーるほど。もしかすると、そこからヒントを得たのかもしれないな」

「?だから、なんなんだ」

「よし、やっぱり次のテーマはこれにしよう」

 次のテーマが決まったので、具体的な内容を雄二に説明した。
 
「それじゃ、熱燗」

 2人の忘年会がスタートした。

・・・研修の日は、朝から冷え込んでいた。関東でも北部地域には雪が積もったらしい。
 
 それでは、皆さん。先週の内容を思い出してください。
 
 マズローの欲求5段階説とハーズバーグの動機づけ・衛生理論でしたね。
 
 今日は、それらと並べて出されるものに、マグレガーのX理論・Y理論というものがありますので、見ていきたいと思います。
 
 一般的には、これらの理論をまとめて、動機づけ(モチベーション)理論と言うようです。

 マグレガーは人間を2つのタイプに分けました。それを、XとYとしたのです。
 
 彼の分類によると以下のようになります。
 
【X理論】

・人間は本来怠け者であり、仕事が嫌いであり、できるだけ仕事をしたくないと思っている。
・たいていの人間は人から強制されたり、命令されたりしないと十分な力を発揮しない。
・通常の人間は、責任を回避する傾向があり、安全を望む。

【Y理論】

・仕事で心身を使うことは当たり前である。
・人間は自ら設定した目標の達成のためには自主的に努力する。
・自己実現の欲求の充足という誘因があれば、人間は組織目標の達成に貢献する。
・人間は条件によっては自ら進んで責任を引き受け、また自分から進んで責任をとろうとする。
・問題を解決するために高度な創造性を駆使する能力は大部分の人に備わっている。
・現代企業の中において、従業員の能力は一部分しか活かされていない。

 このように、マグレガーは人間を二つに類型化したわけですが、Y理論に基づくマネジメントを提唱したと言われます。
 
 内容を見ても明らかにY理論を丁寧に描いていることがわかりますね。

 見方を変えると、マズローの低次の欲求段階やハーズバーグの衛生要因が満たされていない状況におかれた人間は、X理論で説明される行動様式をとると言えるのではないでしょうか。

 X理論は性悪説とも言われますが、この場合のマネジメントは「命令や強制で管理し、目標が達成出来なければ処罰といった『アメとムチ』によることしかありません。

 ある意味、科学的管理法による管理が効果を上げる段階とも言うことができるのではないでしょうか。

 それに対し、Y理論は従業員の自主性を伸ばすことが成果を上げることに繋がりますので、「明確で魅力ある目標とそれを達成するための責任を与え続けることで『機会を与える』」マネジメントを目指すことになります。

 つまり、労働環境の整っている現代においては、「Y理論」に基づくマネジメントが必要となりますね。

 この考え方は、ドラッカーが提唱した「自己目標管理」にも繋がったと言われています。

「ところで、ジン。XとYが数学の変数からヒントを得たという俺の説については、何の関係があるんだ」

「うん、それが今回のヒントになったんだ。つまり、人間を類型化したのだが、単純に二分類というのはいくら何でも乱暴だという意見もある。それはマグレガー自身も言っているが、人間はどちらかになるというわけではなく、XとYのどちらかが強く、どちらかが弱いという極端なXと極端なYを結んだ線のどこかに位置するんだ。そうすると、例えば、aを0~1の定数とすると、たとえば『aX+(1-a)Y』という数学的な代数学からヒントを得たんじゃないかと思ったんだ」

「ほほー。なるほど。それでXとYにしたわけだ」

「思いつきだけどな」

 
(続く)

《1Point》
・マグレガーのX理論・Y理論
X理論:人間は本来怠け者で、責任を回避しようとするものだ
Y理論:人間は本来勤勉で、進んで仕事を行い、責任を取ろうとするものだ

 この2つの類型をもとに、動機づけを考えるというものです。

 現代において、マズローの低次の欲求が満たされていない状態をいうのは、あまり前提とすることはないと思います。しかし、貧困地域や食べることすらままならない環境に置かれている人を管理するとしたら、よりX理論に近い形が必要になるという考え方です。

 つまり、生活水準が上がってくれば、X理論での管理はモチベーション向上効果は期待できないのです。

 Y理論の権限委譲と責任に基づく位置づけ・役割を与えることで、人は自らを動機づけることができるのです。