130:マネジメント基礎講座:科学的管理法から人間関係論へ

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

(前回:テイラーの科学的管理法についての講座を行いました。作業研究によって基準となる指標を作り、課業管理によって、マネジメント手法の礎を作ったと言えるでしょう)
 
 みんなが師走という言葉を口にし出した。
 
 営業部門にとっては、年末の挨拶スケジュール調整に忙殺される時期でもある。
 
「へい、いらっしゃい。毎度」

 縄のれんを弾いて暖かなカウンターの一角へ。
 
「いらっしゃいませ。今日は、お一人なんですか」

 亜海ちゃんが、慣れた反応で、生ビールとお通しを運んでくる。

「たぶん、由美ちゃんが来るはずだよ」

「やったー。由美先輩に聞きたいことがあったの」

「ジンさん。最近、由美っペがお世話になっちまってすいませんね。あいつも、この店を辞めて就職してから、ちょっと苦労していたようでね。中途入社で気を遣ったんでしょう。でも、最近ジンさんを手伝うようになって、明るさが戻ったようです」

 由美ちゃんは、大将の姪で、東京では親代わりをしているのだ。

「いらっしゃいませ。あ、由美先輩。お待ちしてました」

「亜海ちゃん。生ビールをお願いね」

「はーい」

「ジンさん、お待たせしました」

「こっちも、今来たところ。ちょっと疲れているようだね」

「うーん。新規事業を考える組織にいるから、なかなかすっきりしないのがいけないのかもね」

「そうだったね」

「でも、原島社長の会社に行くようになって、これまでと違う考え方を聞けるようになったのが良かったみたい。前回の科学的管理法についてグループ討議したでしょ。その時、会社の歴史を教えてもらったの。部長さんだったかしら。どうやって、会社が大きくなってきたかを熱く語ってくれたのが、すごく印象深くて、今の会社でも聞いてみたの」

「へえー。そんな話をしてたんだ」

「うん。会社って、何かの強みを使って大きくなっていくのね。ストーリーになってるの。そういう話になってみると、科学的管理法だけじゃ、会社は伸びないんじゃないかなという結論だったわ」

 2杯目は、菊正宗のぬる燗にした。

「会社のストーリーか。そうだね。科学的管理法では、成果を出すための目をつけるポイントがあるということがわかったと言う程度だから、もちろん次の展開がある。次回のテーマにした人間関係論は、まさに、科学的管理法では説明できなくなってしまったことから始まるんだ」

 由美ちゃんも、出てきた徳利に手を伸ばして、自分のぐい呑みに注ぐ。日本酒党になってきたようだ。

「人間関係論って言うくらいだから、人と人との関係がマネジメントの視点になるってことね」

「簡単に言うとそうなんだけど、マネジメントをすることで、現実的な成果が出ることがわかった経営者や学者は、次のステップを考えだした。つまり、もっと効率的な管理をするためのポイントを探し出したんだ。作業条件によっても人の生産効率は変わってくるはずだから、もっと能率の上がるものは何だろうか、とね」

「あ!そうか。それをしたのが、ホーソン実験なのね」

「よく覚えていたね。人間関係論では、初めに出てくるのが、電気部品会社のホーソン工場での実験だよね」

「何度も失敗を重ねたって教えてもらったわ」

「そうなんだ。ただ、その実験というのが、実は、当初は、科学的管理法をより進めるための実証実験だったんだ」

「そうかあ。科学的管理法と人間関係論はつながっているのね。じゃあ、次回はそこの説明ね」

「最初の実験結果からはじめるつもりなんだ。最初は、部品の細かい作業を行う工場だったので、照明が明るくなればそれだけ生産が上がるだろうという仮定を実証しようとしたんだ。そのため、2つの組み立てグループを選んで、一つのグループは照明の明るさをいろいろ変化させながら作業を行って変化を調べたんだ。もう一つのグループは一定の照明で作業を行って、比較対象にした。さて、どうなったと思う」

「2つのグループで比較すれば、たぶん、一番効率の上がる明るさがわかるのよね。科学的管理法としては、標準的な能率を上げるための条件を見つけたということね」

「そこの議論から入るつもりなんだ」

 由美ちゃんが疑いの視線に変わった。

「そうか。違うのね。まさか、暗くなった方が良くなったとか」

 実際の結果の種明かしをして、次回の研修をどう展開させるかの相談に入った。

(続く)

《1Point》
 テイラーの科学的管理法から人間関係論へ

 つなぎの話で終わってしまいました。
 
 ホーソン実験という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 
 1927年から1932年までほぼ5年間かけて行った(当初からの予定ではなかったはずです)実験でした。
 
 この実験は、古典的な管理論で主張されている内容を実証することを目的としていました。
 
 たとえば作業をする部屋の照明の明るさや温度など、物理的な作業条件の変化が労働者の生産能率・生産性を規定するという仮説を実証しようとしたわけです。
 
 さて、どうなったでしょう。
 
 次回をお楽しみに。