128:マネジメント基礎講座:テイラーの科学的管理法

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

 商店街では、早くもクリスマスイルミネーションをはじめていた。

「早いもんだよな。どうも、今年があと一ヶ月半もあるなんて思えないな」

 雄二がしみじみとつぶやく。

 3回目の研修に向かっているが、確かに、暑かった夏を忘れたかのように、厚着になりつつある。

 受付も覚えてくれたようで、すぐに研修を行う会議室に案内された。
 
 メンバーもほとんど欠席なし。
 
「前回、マネジメントにおいては、管理とは一面だけだというお話をしました。同時に、組織マネジメント自体が最近の発明であることから、変化している最中であるともお伝えしてありますね」

 雄二が後を継いだ。

「先週、最後に家内制手工業と言われるような家族程度の集まりの中で作業を行っていたものが、なぜ工場などの大組織に変わっていったのか考えてもらいました。グループ毎に発表してください」

 おおむね似たような意見だ。

・蒸気機関のような発明で大量生産が可能になった。
・都会の人口が増え、需要が増えた。
・生活が贅沢となり、自給自足や物々交換では対応できなくなってきた。
・作るものが複雑になり、一人で作るより分業して作った方が効率的になった。
・食料や生活必需品じゃないもの、例えば、本や新聞とか、娯楽とか、芸術や文化的な活動をする人が増え、少ない人数で多くの生産をしなければいけなくなった。

・・・

「なるほど。たぶん皆さんの意見はどれも正しいと思います。そこで、ある程度資産を持っている人は、人を集め、工場を作り、たくさん作ることで大きな収益を上げることができるようになってきたのです。しかし、それまで、個人の付き合いでしか生活や商売をしてきたことが無かった人たちを連携して動かすのは難しかったのでしょう」

そんな時代に組織マネジメントにつながる考え方・手法を具体化した人が出てきました。

それが、フレデリック・テイラーだと言われます。

皆さんも一度は名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

学校の授業でも取り上げられているはずですね。

では、彼の何がマネジメントに繋がるのでしょうか。

彼の生きた時代は、1856年から1915年です。日本で言えば、幕末から明治維新を経て大正時代に当たります。

この時代はイギリスの産業革命期が完了した時代のようです。1850年には、蒸気機関車による鉄道網が開通していますから、蒸気機関を動力源とした工業化が進んでいました。

テイラー自身はアメリカ人でありますが、もちろん、アメリカも南北戦争を経て、工業化が進められていた時期でもあります。

彼は裕福な家に生まれたようで、ハーバード大学に入学し弁護士を目指しますが、病気(目)のため中退し、機械工になったのです。

そこからエンジニアとなり、今で言う「科学的管理法」を実践の中から作り上げていったのです。

当時の工場の労働の状況は、成り行きだったと言われます。

日々の労働は、監督者の感覚、いわば目分量で行われていました。

当然、納得できる目標があるわけでもなく、がんばり損という雰囲気が蔓延していたのです。経営自体も「成り行き」だったと言われます。

テイラーは、そんな現状を分析し、労働者には目標と達成に対するインセンティブを与え、経営者には作業標準による計画的な経営を可能にしたと言われます。

まず、作業研究をします。

たとえば、ある製品を一個作るための標準時間を決定しようとしているとします。

その際、個人の勝手な動きや無駄な動作を排除し、道具や環境が整備されている必要があります。

これらの条件を整えることで特殊要件を排除し、製品を完成させる必要最小限で、最善の動作を研究しました。

次に、この動作の連続である作業を要素に分けて、ストップウォッチで計測し、それぞれに余裕時間を加えて「標準作業時間」を作ったのです。

これで、まずは、計画の基礎ができたわけです。

作る製品が決まれば、労働者の人数と労働時間から目標の製品数が決まるわけです。

逆に言えば、各労働者や一連の作業を監督する監督者にとっても作業を評価する基準ができるわけです。

 
 受講者からは、「厳しいなあ」という声が上がった。

「確かに、ストップウォッチで計測した決められた動作を続けるのは人間には酷なような気がしますね。ただ、ここで、注目するのは、標準を作ることで、公正な基準を作ったと言うことです。誰でもわかる定量的な目標や個人評価が可能になったんですね」

(このテーマ続く)

《1Point》
 テイラーの科学的管理法
 この理論は、「作業研究」と「課業管理」に分けられます。
 
 今回説明したのは、「作業研究」の部分です。
 
 目的は「標準作業時間」を設定することにあります。このため、「動作研究」と「時間研究」によって、要素毎の標準的な作業時間を設定します。
 
 これらを組み合わせた一連の作業時間の合計に、余裕時間を入れれば、「標準作業時間」が決定できるというわけです。
 
 重要なのは、目標と評価の定量的な基礎を作り上げたと言う点にあることを強調しておきます。