119.(5)我々の計画は何か?

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

(前回まで:高校の先輩原島にアドバイスをしています。ミッションは何か、顧客は誰か、顧客にとっての価値は何か、われわれにとっての成果はなにかと続いています)

「いらっしゃい、ジンさん。毎度」

 縄のれんを弾くとすぐさま大将のだみ声が迎えてくれる。変わらない。
 
「暑い暑いって言い続けてるけど、やっぱり秋の気配はありますね」

「本当に、今年の夏は暑かったですからね。おしぼり、どうぞ」

 今日は早かったこともあり、亜海ちゃんもまだらしい。

「はい、生ビールお待ち。あ、いらっしゃい」

 由美ちゃんだった。

「ああ、よかった。ジンさんが来てるかなと思ったの」

「そりゃうれしいけど、連絡くれれば、もっとうれしいのに」

「え?ほんと。無理矢理営業してるみたいでちょっと連絡しづらかったの」

「まだまだ、みやびの看板娘だなあ。由美ちゃんだって、お客さんなんだから普通でいいんじゃないか」

「そっか。じゃあ、乾杯」

 久しぶりに由美ちゃんと会った気がする。

「おじさんに聞いたけど、高校の先輩の方にコンサルしてるんですって?」

「そうなんだ。今日も待ち合わせだから紹介するよ」

 しばらく、お互いの会社の様子などを話していた。
 
「いらっしゃい。毎度」

 原島さんが到着だ。

「原島さん、この間までここの看板娘だった清田由美さんです。由美ちゃん、先輩の原島さん」

 2人が名刺交換して奥の席に原島さんが腰掛けた。
 しばらく、四方山話に花が咲いたが、最近の状況になると原島さんが待ってましたとばかり乗り出してきた。
 
「われわれの成果は何か?と書いた下にいくつかの目指すものが書かれたぞ。具体化してきたし、みんなの目が変わった。行動したくてワクワクしている状態だな。今日も壁に貼りだした顧客の声と目指すべき成果を組み合わせて見直していた。次は何ですか?というのが彼らの結論だ」

「もう行動に移る時期かもしれませんね。5つめの質問ですが、『われわれの計画は何か?』です。実施計画ですね。そのためにミッションと顧客の価値、そのために目指すべき成果を達成するための具体的な目標と取るべき行動を決めることです」

「よし。スケジュールを具体化するということだな。明日から何をするか計画を立て、それに従って活動を開始するか」

「原島さん、もちろんすぐにでも行動に移るべきなんでしょう。でも、ここまでじっくり検討してきたので、もう一度ポイントを絞った方がいいかもしれませんね」

「ポイントを絞る?随分絞ってきたがな」

 隣で、口を挟みたい由美ちゃんがじっと聞き耳を立てている。

「まず、実現可能で、評価ができる範囲でのゴールをステップ毎に立てたらどうでしょう。いきなり最終目標に向かうのも大事ですが、まず到達するゴールを決めるんです。マイルストーンとして考えてみてください」

「なるほど。一歩ずつ、確認しながら進む感覚だな」

「そうですね。でも、その前に先日も言いましたが、これまでの業務や事業において『廃棄』するものを見極め、実行することも重要です。従業員も、これまでの仕事をそのままに新しい活動をするのは難しいと思うでしょうし、どちらも中途半端になってしまいます」

「うん、それも始めている。実は、今回のワークでメインだと思っていた事業を廃棄しようと思っている。多くの労力を必要とするんだが、現実には成果は僅かなんだ。ただ、長年続けてきたから、今も続けている。既に、止めたとき影響を受ける関係者に話を聞き出しているところだ」

 やっぱり原島さんはただ者ではない。

「そこまで進んだなら私の出る幕はほとんど無いですね。ポイントを再度確認するとすると、成果を挙げだしたなら『集中』すること、これまでのやり方じゃなく、新しいやり方を考えること、『リスク』を分析して、廃棄か強化かを何度も問い直すことくらいです」

「出る幕は無いなんて言わせないぞ。計画こそよく見てほしい。廃棄するものや新しくやろうとしていること、ましてやリスクの取り方を見てもらいたい。検討チームだけじゃなく、これから従業員全員に自分のこととして考えてもらわなければいけないからな。これからが勝負だ」

「そうでした。もちろん、すべてはこれからですね。特に、計画通りに行くことはありませんので、その修正と実行の連続に挑戦させる気持ちを維持させることが一番重要です。やりましょう」

 思わず、原島さんとがっちり握手をした。
 きっと、由美ちゃんが最初から説明してくれと言うのだろうと予想できるほど、身を乗り出してきていた。

(続く)

「われわれの計画は何か?」
 
 ドラッカーの5つの質問の最後です。
 
 計画には、ミッション・ビジョン・ゴール・目標・行動・予算・評価が織り込まれることになります。
 
 ドラッカーの事例には、5段階のゴールが設定されたものが示されていました。そして、そのゴール(目標)は具体的で評価可能であることが必須です。
 
 ドラッカーの言う計画における5つの要素は以下の通りです。
 
 1)廃棄
 2)集中
 3)イノベーション
 4)リスク
 5)分析
 
 今回直接利用した「経営者に贈る5つの質問」(P.F.ドラッカー、上田惇生訳 ダイヤモンド社)は、100ページ程度の薄い本ですが、何度も読み返す価値があると思います。
 
 是非、手にとって読んでみてください。