108.SFAとは

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト

(前回まで:顧客情報管理のシステムであるCRMについての話が続きました)

 珍しいことが続くものだ。
 いつも早い時間から常連の位置をキープしている近藤さんもこの遅い時間にやってきた。
 
「新潟に営業担当者と行ってたんですよ。5時過ぎまで客先周りをしていたんで、こんな時間になってしまったんです」

 大森さんが意外そうに言った。

「へえー。いつもの近藤さんだったら、その営業マンを飲みに連れてったんじゃないんですか?」

「いやねえ。誘ったんだが、これから事務所に帰って今日の営業報告を書かなくちゃいけないって言うんで諦めたんだ。昔だったら帰りの新幹線でちゃちゃっと紙の報告書に書いて、まとめて出せば良かったらしいんだが。今では、データベースに入れなけりゃいけないらしくて、事務所のパソコンを使わなきゃいけないらしい」

「モバイルパソコンなんて持ってないのね」

 由美ちゃんが意外そうにつぶやく。
 
「いやいや、持ってはいるんだ。でも、それじゃなくて、会社のシステムに直接入力するらしい」

 やっぱり意外だ。

「近藤さん。中堅の建設会社の御社が不思議ですね。CRMの仕組みはあるのは聞いてましたけど、その活用にSFAまでは入れてないんですね」

「ジンさん。そのSFAってのは何だね。何かいい方法があるのかい?」

 雄二や由美ちゃんも再び身を乗り出してきた。

「それだ、ジン。俺の聞いたシステムに、そのSFAってのもあったぞ。思い出した」

「CRMは顧客の情報を統合して顧客関係を向上させるわけだけど、それを活用するシステムもあるって言うことね」

「そうだなあ。結構、定義が曖昧で一緒になっていたりするんだけど、SFAは Sales Force Automation の略で一般的には営業支援システムと呼ばれてるね。案件や商談情報、顧客との接触の履歴、スケジュール管理、日報、クレーム情報管理などをITを使って支援し、営業の生産性を上げたり、顧客満足度を上げることを目指したシステムなんだ」

「うん?それって、今はやりのグループウェアと何が違うんだ?」

「たぶん、今のグループウェアの仕組みを取り入れているのは間違いない。ただ、営業戦略に結びついたものになるため、一般的なグループウェアとは一部機能が違うかもしれないね。たとえば、案件について、情報を記録するだけじゃなく、それぞれの進捗状況やあらかじめ設定していた判断基準によって、案件の絞り込みを自動で行って、一覧することが出来たりする。パソコンだけじゃなく、携帯電話での閲覧・入力が可能になっているものも多いようだ」

「なーるほど。携帯から使えれば、モバイルパソコンすらなくても、簡単な日報とか、接触記録を入力できるわけだ」

「そうだ。最近のSFAはASPと呼ばれる社外のサーバーを利用したものが主流になっている。携帯から入力が簡単にできるように、顧客名や営業ステップをメニューから選択するだけで記録出来るようになっているようだね。うちの会社で入れているのは、スケジュールと接触記録が一緒になっている。あらかじめスケジュールをパソコンで入れておけば、接触した直後に、喫茶店でも、電車の中でも、接触済みのチェックを入れれば、データベースに即反映するようになっているんだ。その記録はそのまま日報として閲覧することも出来る」

「ジンさん。それなら、うちの営業マンも携帯だけもって歩けば、会社に戻らなくてもいいわけですね」

「そうですね。過去の記録も携帯で閲覧できますから、これから会う顧客に、前回いつ会ったのか、誰が会ったのか、また、その時の話題は何だったのかを確認することが出来ます。社内で共有すると、別の部署の人が、違う仕事で接触していることも確認できます。初めてのお客さんのつもりで行ったのに、別の部署で不手際を起こしていて、火に油を注いでしまったなんてことも防げるかもしれませんね」

「それはすごい。うちでも是非それを入れさせましょう。ジンさん、そのシステムの業者を教えてください」

「了解しました。いくつか、似たようなサービスをしているところもありますが、それぞれ特徴がありますから、当時の検討担当者に連絡させますよ」

「ジンの会社と近藤さんの会社じゃあ、営業自体が全然違うけど、大丈夫なのか?」

「雄二の心配も当然だな。うちも、導入するときには、自社の営業プロセスを分析して、それでシステムをカスタマイズした。事前のコンサル期間も半年以上かかったんじゃないかな。その後も、1年くらい、導入の研修やフィードバックとシステムの修正を続けたような気がする」

「ジンさんの説明を聞いていると、CRMの仕組みを業務プロセスに載せていくシステムって感じよね。営業担当者が営業活動を行っている中で、データが蓄積していくし、また、そのデータを出先で利用して効率化しているものみたいね」

「由美ちゃんの説明通りだね。SFAというのは、CRMの一部であると同時に、その機能を利用することでCRMを実現するという関係にあるんだ。その技術的なシステムはグループウェアを利用しているというのが現実のようだ」

 五星霜の4合瓶がカラになっていた。そろそろ部屋に帰る時間かもしれない。

(続く)

《1Point》
・SFA(Sales Force Automation)
 
 営業支援システム
 
 Automationとなっているように、単にデータを入力したり、閲覧するだけのシステムではありません。
 
 そのデータから、営業方針や目的に応じて、自動的に通知が発信されたり、必要なデータが加工されるようなシステムとなっているようです。
 
 私自身、営業のマネージャー当時、足と汗だけの職人型営業を変えようと導入した経験があります。
 
 宣伝になってしまいますが、ソフトブレーン社のE-セールスマネージャーというシステムでした。
 
 結果的に、その導入した営業部門が無くなってしまい、カスタマイズした営業プロセス自体が消滅してしまったので最終的に解約しました。
 
 ただ、この時、この会社のコンサルタントとやり取りする過程で、これまでの営業の仕組みがいかに非効率だったか整理することが出来たのが、私にとっての成果でした。