81.NPOとは(2)

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
山野綾:ジンの営業部の部下

(前回まで:雄二に加え、営業部の部下 山野綾とみやびで忘年会をしています。NPOについての話が続いています)

 雄二から、非営利組織NPOの評価が難しいという意見が出た。それが、一番の問題だ。

「営利企業は、活動から収益を上げて、最終的に配当や投資に回すことができる利益を出さなければいけない。つまり、利益が出せないということが明確な評価に繋がり、何らかの対策を講じないと倒産することになってしまう。つまり、雄二の言うように、営利企業では明確な評価指標があるということだ。」

 雄二が乗り出す。

「ところが、非営利組織にはそれが明確な形では無いと言うことだな。まあ、好きでやっているボランティアなんだから、リスクも少ないからいいんだろうな」

「雄二。非営利組織というのは、一般的なボランティア組織だけではないんだ。日本ではそんな感覚はないが、学校(学校法人)や病院(医療法人)なども非営利組織といえるんだ」

「なんだと。そりゃあ大変だ」

 山野綾がハッとした顔で声を上げた。

「そうか、そうなんですね」

「何々?綾ちゃん、1人で納得してないで、おじさん達にも教えてよ」

「鳶野さん、北野さん。今の話で、今の学校問題や病院問題に繋がるわけですね。特に、学校では、何か問題が起こるとマスコミなんかが寄ってたかっていじめ抜きますよね。でも、こんなすごい教育をしているという報道って、ほとんど無いです。それって、誰も評価指標を持っていないってことじゃないですか?」

「山野さん。それは、良い指摘かもしれないね。学校のミッションって一般的に言って何だろう」

 思わず、質問してみた。

「そうねえ。やっぱり、社会に貢献する子供達を育てる、とかじゃないですか。さすがに、良い大学に入れて、良い会社に就職させるということじゃないですよね」

 由美ちゃんも参画してきた。

「綾さんの学校のミッション、素敵ね。学校がどんなミッションを掲げているのか、気にしたこともなかったけど、もし、綾ちゃんの言うように社会に貢献する子供を育てるのだったら、いろいろなビジョンが描けるわよね。社会への貢献って、一つじゃないから、たとえば、運動能力の高い子には、トップアスリートへの道もあるし、環境への好奇心や地域の活性化、バリバリの実業家もあるわ。そんな多様な子供達の可能性をいかに支援できるかをビジョンとして描けば、一つ一つの目標が出せるんじゃないかしら」

「企業経営と何ら変わらないよね。今、NPOにとって、一番大事なのは、自分たちは何でなければならないのか、と考えることだと思うね。学校というある意味特殊なNPOについて考えてみても、具体的な目標を掲げることが重要であることがわかる。山野さんや由美ちゃんの指摘は学校関係者にそのまま伝えたいような話だね」

「綾ちゃん、由美。なんか、俺は感動したぞ。社会に貢献する子供を育てるというミッションを掲げた学校が、具体的に数多くの目標を掲げれば、他の学校や地域、企業と協働できるような気がする。そうすれば、成果をあげたのかどうか、長期でも短期でも評価できるじゃないか」

 学校をNPOとして考えただけでこんなにも前向きな考えが出ることに驚いた。

「みんな予想以上だよ。NPOの成果を評価する難しさは、多くが短期で結果が出ないということなんだ。やるべきことを明確にして、外に宣言することで、ある程度短期でも学校の外側から評価を受けられるかもしれないね。学校の中だけで完結しようとする傾向が、今のギクシャクした教育環境を作っているのかもしれない。一つの意見ではあるけど、一度、このメンバーで近所の学校へ行ってみようか」

「あ、それ良いかも。考えているだけじゃなく、実行ね」

「それじゃ、我々のアイディアに乾杯しよう。大将も一杯どう?」

「それじゃ遠慮無く」

「かんぱーい!」

 NPOという言葉からスタートしたことで、思いもかけない考え方に気づいたのだが、当初の目的である鍋を忘れていた。

「そう言えば、山野さんには、ちゃんこ鍋を食べさせると誘ったんだったね。大将、鍋よろしく」

(続く)

《1Point》・非営利組織(NonProfit Organization)

 「非営利組織の経営」を書いたドラッカーは、その前書きにおいて、「あらゆる非営利組織に共通するミッションとして、人に自己実現の機会を与え、理念と信条と理想に生きる機会を与えるためにも資金が必要である。」と明確に言っています。

 たとえば、学校については、自己実現を目指し、かつ、理念と信条と理想に生きるのは、教師でなければなりません。

 今、学校は、地域に門戸を開放して、新たなシステムを構築しなければいけない状況にあるのではないでしょうか。

 内部に、導くものと導かれるものがいる組織であることから、成果を内側だけに求めがちなのかもしれません。子供達は外へ出て行って、始めて成果を現すことになるのです。