77.知的資産

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問

(前回まで:目標管理の重要性と難しさについて考えてみました)

みやびのちゃんこ鍋を堪能した女性達が引き潮のように静かに減っていって大将や由美ちゃんも落ち着きを取り戻した。
近藤さんも引き上げたのだが、自己目標管理の話を聞きたい由美ちゃんにせがまれて残っている。

「自己目標管理は難しいわね。私は会社勤めの経験がないから判らないけど、常に自分の目標を意識して仕事をするが大変なのは想像できるわ。でも、ジンさんに質問があるの。この前の従業員の暗黙知の話でも感じていたんだけど、会社の内部では暗黙知をチームで形式知化したり、自己目標管理で強い企業になるんだけど、外からは判らないものよね」

「そうなるかな。ケーススタディで事例が出ることはあるけど、確かに見えづらいかもしれないね」

「そうすると、たとえば、私たちがそんな内部的に魅力のある企業に就職したいとか、投資家が企業を評価するときだって、判断できないってことになるわよね。それじゃあ、もったいない気がするんだけど」

「なるほど。対外的に発表される事業報告には財務報告の貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書がメインで、後は事業環境がどうだとかというレベルだからね」

「ジンさんも前に言っていたように、財務諸表に表されているのは過去の活動の結果だもの、今後のその会社を評価するにはそんな内部的な活動も出していかなければいけないんじゃない?」

またしても由美ちゃんの発想には驚かされる。

「それは正に現在進行形の課題だね。実際には、最近進められているものに、『知的資産』というものがあるんだけど、これなんかは由美ちゃんの疑問と同じところから出てきたと思うよ」

「知的資産?知的財産というのは聞いたことがあるような気がするけど、違うの?」

「経済産業省のパンフレットなどを見ると、『知的資産とは、従来のバランスシート上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業等における競争力の源泉である、人材、技術、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表に表れてこない目に見えにくい経営資源の総称です』というような説明になっているね。特許などの知的財産も含んだ考え方のようだね」

「でも、そんな考えもみんなに公開しないと意味がないわよね。あまり見たことないような気がするんだけど」

「そうだね。そう言う意味で言えば、まだこれからのものかもしれないね。中小企業庁などでは、自らの強みに気づく効果や取引先の信用度アップ、従業員のモチベーションや一体感に効果があるとして推進を開始したところだね。考え方と共に『知的資産経営報告書』の事例を公開したりしている段階ようだし」

「これからは、目に見えるものだけじゃなく無形の強みも強くアピールする経営が必要になってくるのかもしれないわね」

確かに、考え方としての『知的資産経営』は、経営者の姿勢を問われると言う意味で言えば、事業報告の主流となるかもしれない。

(続く)

《1Point》
・知的資産経営

知的資産経営については、現在進行形の考え方で今後整理されていくのではないでしょうか。

その考え方は以下のようにまとめられます。

【内部マネジメント】

・自社の強みをしっかりと認識する

・自社の強みがどのように収益に繋がるのかをまとめる

・経営の方針を明確にし、管理指標を特定する
↓                ↓
・報告としてまとめる     ・知的資産経営の実践

【外部マネジメント】
・ステークホルダーへの開示:外部資源の活用と協働

考え方自体を見ると、企業の戦略策定の流れそのもののようです。つまり、ベンチャー企業が投資家向けに説明するビジネスプランの全社戦略部分を継続企業においても公開するという考え方のように感じます。  うまく活用できれば有効な報告書になるかもしれないと期待しています。

ところで、私は中小企業診断士として以下の本の共同執筆者として関わっています。
2011年の発行でちょっと古くなってきましたが、基本的な考え方や報告書の作成方法などは今でも十分役にたつと思います。興味ありましたら、手にとってみてください。
知的資産経営が中小企業を強くする

知的資産に関するリンク

経済産業省「知的資産経営ポータル」

中小企業基盤整備機構「事業価値を高める経営レポート 作成マニュアル」