7.「小さく始める」と SWOTの方向性

(前回まで:思わぬ依頼で、居酒屋みやびのSWOT分析を行った。こうして、夜が更けて家路についた)

週末の土曜日は平穏だった。
昨夜は、時間の割にそれほど飲んでいなかったようで、朝、目覚めると走りたくなった。

初夏の朝は、まだ空気にヒンヤリ感を残している。無理をせず、ゆっくりと走り出す。

住宅地を抜け、河川敷へ向かうと色とりどりのジョガー達や早朝練習の野球少年達とすれ違う。

雄二への宿題も、居酒屋みやびのSWOT分析も、いきなりだったわけだが、次のステップを考えておかなければいけないだろう。
特に、雄二は本気のようだ。

ビジネスプランを作り上げるためには、事業の核となるビジネスモデルをしっかりさせなければいけない。そのための宿題なんだ。

新しく事業を立ち上げる場合、これまでの経験や実績を参考にするわけにはいかないことが多いため、どうしても慎重にならざるをえない。

「小さく始める」

これは、ピーター・ドラッカー氏の著作や対談記録の中で、よく目にする言葉だ。氏の教えの基本は、自分の事業を明確に把握できるように、身の丈で始め、小さなところからイノベーションの芽を育てていくことなのだろう。

雄二は、起業家の多くがそうであるように、自分のビジネスアイディアに酔っている。どうしても、大きな成功を夢に描いているため、足下が見えなくなってしまう。

そのためにも、ターゲットを絞り、果たして、個々の顧客のニーズにマッチした商品・サービスの提供ができるのかどうか、を検証してみなければいけない。

それに対し、居酒屋として実績も経験も積んでいる「みやび」の見直しについては、現在の状況の分析から始めることになる。

現状の分析→事業の方向性の確認→課題の抽出→改善・革新

SWOT分析から「機会を捉えられる強み」に注目することが第一のテーマとなる。脅威については、特に差し迫ったものでなければ、あまりくよくよしても仕方がないと割り切る度胸も必要だ。

脅威や弱みというのは、実は、うすうす気づいていることが多いんだ。だから、明確に箇条書きにすることで、みんなの認識が同じであることを気づかせることができる。
認識が一つになることで、次の改善へのステップも踏み出しやすくなる。

汗が流れ始める頃には、走るスピードも上がりだした。
さすがに、朝とはいえ、初夏から盛夏へひた走る頃だ。汗の噴き出しも激しくなってきた。

アパートに着く頃には、若干息が上がり、夕べの酒もあらかた体外放出完了というところだ。

シャワーを浴びながら、再度、みやびのSWOTについて考えた。

雄二の言うように、商店街の入り口に建築中のオフィスビルに入る企業や従業員に対して、効果的なプロモーションを展開できれば、チャンスはある。

また、商店街の活性化や近隣の日本酒好き、インターネットでのこだわりの日本酒居酒屋への口コミの誘発なども考えられるな。

「機会に、強みを適合させる」ことと、プロモーションの相乗効果は大いに期待できる。ただし、具体的な脅威がないのかどうか、そこが問題だ。

冷凍庫を覗くと、鳥の胸肉があったので、これでサンドイッチを作ることにした。

解凍した胸肉に塩胡椒し、小麦粉を振って油で揚げる。
食パンを軽くトーストし、マーガリンと辛子を塗り、レタスとスライスした胸肉のフライをはさんで完成。

ビールというわけにもいかず、トマトジュースで健康を保とう。

(続く)

《1Point》

「SWOT分析」の活用について

SWOTによって抽出された強み・弱み・機会・脅威を検討する場合、一番重要なのは、「外部環境の機会」に対して、活用できる「自社の強み」は何か、という視点です。

強い機会があっても、それを活かせる強みが自社にないならば、あまり拘泥しない割り切りも大切です。
「機会に活かせる強み」という視点で、自社の強みを再検討してみましょう。