67.VRIO分析

 商店街役員の大森さんは、最近の商店街の不振をなんとかしようと行政から紹介されたコンサルタントのセミナーを受けているという。

「役所の補助金で受けてるせいかもしれないけど、あんまり我々の中に入ってきてくれないような気がするんだよね。いろんな知識を教えられても、結局どうすればいいのか判らんよ」

 少し酔いが回ってきた大森さんには、由美ちゃんが合いの手を入れる。

「それだったら、ジンさんを雇っちゃえばいいじゃない。この商店街のことだってよくわかってるし。ねえ、ジンさん」

「ははは。そうは簡単にはいかないよ。サラリーマンの身だしね。でも、協力は惜しみませんよ」

「ホントにそうだよな。会長に今度申し入れてみようかね。そりゃあ、競争だけど、競争戦略がどうこう言われてもピンとこないんだよね。もっと、自分たちのどこがいいのか、何かをやろうとする時、何を基準にしたらいいのかを教えて欲しいんだよね」

「なーるほど。そのコンサルタントは、ライバルとの競争を重点的に説明しているんですね。確かに、商店街にとっては、大型スーパーなどが脅威かもしれないけど、もっと自分の内部に重点を置いてもいいかもしれないですね」

「そうなんだよ、ジンさん。なんか違うなあ、と思うんだよね。もっと違う話は無いもんかね」

 由美ちゃんも考え込んだ顔をしている。
 
「ねえ、ジンさん。SWOT分析なんかでは、外部環境と内部環境を分析するわよね。でも、競争って言うと外部との生々しい闘いばかりイメージするけど、まず内部をしっかり見ていく考え方ってないのかしら」

「そうか。由美ちゃんの目の付け所には参るね。確かにあるよ。内部の経営資源に基づいた見方として、内部資源理論とか経営資源に基づく視点とか言われるRBVというのがある」

「おいおい、昔流行ったスポーツカーみたいな名前だね」

「Resource-Based Viewの略です。Resourceというのは、まさに内部資源ですから、内部資源をベースとした見方というそのものです」

「へえー。それで、内部資源から見る時って、どうするの?」

「有名な理論では、またローマ字だけど、VRIO分析というのがあるよ。V:Value(価値)、R:Rareness(希少性)、I:Imitability(模倣困難性)、O:Organaization(組織)という4つの要素から強みを分析するというものなんだ」

「難しい英単語だなあ。ブリオ分析って言えばいいんだね」

「大森さん、まあ、略語なんでそう覚えておいていいと思います。中身を覚えるには、英単語を思い浮かべた方が思い出せますけど。ところで、どう見ていくかですね。

まず、自社の経営資源で強みと思えるものを、本当に競争優位として使えるかどうかを分析するために使います。

たとえば、新しく開発した製品があるとします。それが、外部との競争に使えるかどうかを内部的な視点としてのV・R・I・Oの順に検討していきます。

V:その製品は経済的な価値をもっているかと考えます。まあ、価値が無い開発製品は元々失敗作だと言えますが。

R:次に、その製品に希少性があるかです。たとえば、他にその製品を開発したところがなければ、希少性が高いと言うことになりますね。

I:では、その製品を他社が模倣することが困難かどうかを検討します。たとえば、特許を取っているなど、簡単にマネできないならば模倣困難性が高いと言えます。

O:そして、最後に、自社の組織体制がその製品を有効に製造・販売する体制になっているか、という視点で見直します。

こんな流れで見ていくことになります」

 由美ちゃんが反復する。

「1.価値があるか(V)、2.希少性はあるか(R)、3.模倣が困難か(I)、4.組織は対応しているか(O)、と順番に見ていくということね」

「そう言うことだね。競争というと競合との関係ばかりに目を向けていた視点を、まず、自社の内部に向けた理論として意味があるだろうね」

(続く)

《1Point》

・VRIO分析
 バーニー教授(米・オハイオ州立大学)が提唱した理論。
 
 V(Value):自社の経営資源に価値があるか
 R(Rareness):その経営資源に希少性はあるか
 I(Imitability):他社に模倣されにくいか
 O(Organaization):最大限に活かす組織となっているか

 実は、この分析で、最後の「O」がネックになっていることが多いと言われています。
 
 せっかくの強みである資源でも、旧来のやり方から脱却できず、自社の組織が足かせになってしまっていないか?を検討することが最も重要かもしれません。