66.店舗戦略「ドミナント出店」

(前回まで:ジンの自宅で、由美と雄二に店舗戦略についての勉強会を行いました。店舗戦略と最後にマーケティングミックスを復習しましたが覚えていますか?)

「いらっしゃい。あ、ジンさん、毎度。そういや、先日は由美っペがお世話様でした」

「いえいえ。危うく、男2人で花火見に行くとこだったんで助かりました。今日は休みですか?」

「ちょっと、お使いに行ってもらってます。じき帰るでしょう。生でいいですね」

「もちろん」

 次第に秋の気配となってきたが、まだまだ、生ビールが欲しい季節だ。

「へい、お待ち。お通しは、秋刀魚の南蛮漬けを作ってみました」

「いただきます。・・・うまい。塩焼きもいいけど、酢が効いててピリッと秋を感じますねえ」

「そろそろ秋刀魚も安くなってきますからね。先取りですよ」

「ジンさん、早いね。お、秋刀魚だね。来た甲斐があった」

 商店街役員の大森さんだった。

「だんだん、枝豆との別れの季節ですからね。南蛮漬け、うまいですよ」

「黒さん。お通し多めで頼むよ」

「ははは。大森さんには言われなくても大盛りですよ」

「よ、大将、うまいね」

「まったく、レベルの低い親父ギャグで喜んでるんだから」

「お、毒舌由美登場か。黒さんが親父なら私は爺さんかな」

「大森さん、いらっしゃい。大森さんがお爺さんの訳ないじゃないですか。ジンさん、この間はありがとうございました」

 お使いに行っていた由美ちゃんが帰ってきた。

「由美ちゃんもお疲れ様。やっぱり花火には浴衣美人がいないと様にならないからねえ」

「ジンさん、ありがとう。ジンさんくらいよねえ、誉めてくれるの」

「由美。そんなことないだろう。私だって看板娘の由美がいるから通っているんだから」

「大森さんもありがと。サービスしなくちゃね」

 お愛想をいいながら、奥に入っていった。

「そうそう。ジンさんにまた聞きたいことがあったんだ」

 大森さんは、商店街の活性化などのセミナーなどが多いらしく、苦労していると言っていた。

「いいですよ。やっぱり、セミナーですか」

「そうなんだよ。カタカナ会社のコンサルタントが話す言葉ってのはついていけないんだよ。今日も若い奴がドミノとかなんとか言う話をしてたんだけど、まず、その言葉が覚えられない」

「え、ドミノですか?ドミノ倒しの?」

「いや、違ったな。何でも、コンビニの戦略とか何とか言ってたようだった。まったく、何でもカタカナで言えば誰も判らないと思って使ってるんじゃないかと疑いたくなるよ」

「ああ、それなら、ドミナントじゃないですか。セブンイレブンなどの出店戦略として言われてましたよ」

「あ、それそれ。そうだ。ドミナント出店って言っていたな。言葉に引っかかって中身を聞き逃してしまったんですよ」

「ドミナント出店というのは、ある範囲に複数店舗を集中的に出店する立地戦略です。セミナーなんかでの説明では、商圏の真ん中に点を打って、そこに物流センターを作り、配送効率のいい範囲にグルッと店舗を作っていくというイメージですね」

「なーるほど。それで、コンビニって言うのは、結構近いところにたくさんあったりするんだ」

「初期の戦略と言えるかもしれませんね。たとえば、コンビニが無かった地域に集中的に出店するとその地域での知名度は一気に上がりますよね。その上、効率的に配送できるので、配送コストを下げることが出来ます。それと、出店初期には、各店舗の指導を常時しなければいけないので、スーパーバイザーと言われる指導員も効率的に各店舗を回って指導できます」

「日本語で言えないんですかね」

「日本語で言うと、『高密度多店舗出店』というみたいですね。英語のドミナント(Dominant)が支配的という単語ですから、強い資本の戦略かもしれませんね。セブンイレブンのドミナント出店の空白地帯を狙って展開したのがローソンの戦略と言われています」

「ローソンがチャレンジャーなのね」

 由美ちゃんが着替えて出てきた。

「そういうことだね。ドミナント出店が業界のリーダーの戦略なら、ローソンのようにリーダーの手が回らないところに集中するのが、チャレンジャーの戦略と言えるね」

(続く)

《1Point》

・ドミナント出店
 店舗戦略の1つである立地戦略の有名なものです。
 期待される効果は
 ・その地域での知名度アップ、信用力の向上
 ・配送コストの効率化、宣伝コストの効率化
 ・本部の巡回指導や営業効率向上
 と言われています。
 
 なんと言っても、一気に商圏内シェアを獲得して、まさに支配的になるということでしょう。
 
 別の例としては、東京・大阪・神奈川に絞って出店している酒類量販店の「カクヤス」がこの戦略を使っています。ただ、カクヤスの場合、特に購買力の高い高密度商圏に絞っただけでなく、ビール一本でも配達するという営業戦略を加え、差別化と他社の参入障壁を高くしていると言えるでしょう。