65.店舗戦略「ポジショニング・コンセプト・方向性」

(前回まで:ジンの自宅で、由美と雄二に店舗戦略についての勉強会を行っています。店舗戦略の決定プロセスに入りました。市場機会探索の部分から若干ダブらせて続けます)

 
「・・・・1番目の『市場機会探索』は判るね。ドメインのスタートであるニーズを見つけるということだ。SWOTで言えば、まさしく外部環境の『機会』になるわけだ。そして、何度も言うように、『脅威』に分類したものにも『機会』が隠れているかもしれないと言うことを忘れないことだよ」

 市場機会はどんなところにも潜んでいるから、割り切らず、何度でも検討し続けること、ね。

「次に、ポジショニングについて説明するね。ポジショニングというのは、簡単に言うと競争相手と差別化をすると言うことになる。自分はどこで戦うのか、を明確にしないとお客さんに訴えるものが無くなってしまうよね。たとえば、飲食店で、和食でも中華でも、洋食でも何でもありますというやり方は、一見良さそうでも、顧客を惹きつけるかというと怪しいだろう?」

「そうねえ。何の店か、何がおいしいか、はっきりしていた方が行きたい店になるわ。食べることが目的じゃないならいいけど」

「そうなってしまうよね。ターゲットとした顧客層に訴えかけるために、どんなポジションを取るのかを考えて、差別化をはかることが重要なんだ」

「ポジショニングを取るためには、市場機会としてのニーズに対して、自社の資源のどの強みをぶつけるかを考えないといけないだろう」

「雄二の言うとおりだな。そのための環境分析なんだ。ポジショニングが出来たら、店舗にとっては重要なコンセプトの構築もほぼ出来上がることになる。ターゲットを絞り込み、自社のポジションが決まったら、ストアコンセプトとして整理してみよう。20代ビジネスマン向けの和食の店を作るなら、店のデザインや雰囲気、品揃えがそれに合わなければいけない。40代をターゲットとした時とは違うはずだよね。全体をまとめるためにもコンセプトを明確にする必要がある」

「20代のビジネスマンなら、あまり高級感を出しても仕方ないので、和の雰囲気で、ちょっと背伸びした店作りかな。メニューは、やはり、コストパフォーマンスが高く見えるものね」

「そんな風に検討していくといいね。これで、方向性を決定し、店舗戦略の完成だ。もう一度おさらいするね。環境分析を元に、ターゲットを絞り込み(誰に)、自社の強みを活かしたポジションにあわせて(何を)、コンセプトを統一する(どのように)」

「誰に、何を、どのように、提供するか。難しいことを考えず、これを繰り返せば良さそうね」

「そうだね。全体的な方向性については、たとえば、地域密着で商店街との連携を積極的に行うとか、メニューの企画力で勝負するなら、社員から常にアイディアを出させる仕組みを作るとか、全社員の行動指針につながってくる」

「戦略は決まった。次は、実行だな」

 鳶野さんが、そわそわし出したように見えるわ。
 
「雄二。ちょっと待て。もう少し、時間はあるだろう。実行のためには、もう一段階の検討が必要だぞ」

「そうか。ビールはまだか・・・そう言えば、あれか。マーケティング・ミックスだな」

「私も思い出したわ。マッカーシーの4Pだったわね。ええっと。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの4つね」

「2人とも合格。覚えていないかと思ったよ。コンセプトや方向性が決まっているので、それを実現するための個別戦略ということだね。プロダクトは、和食店ならもちろん提供するメニューの1つ1つを決めていくことになる。プライスは、由美ちゃんの言ったように、コストパフォーマンスを考えて決めなければいけないね。そのための仕入などのプレイス、チラシを配るのか、ホームページを作るのかなどのプロモーションを決定するのが、マーケティングミックスだったね。うーん、もう教えることは無くなってきたかな」

「よっしゃ、ジン。もう、ビールを出してもいいのか」

「そうだな。心ここにあらず状態になりつつあるか。由美ちゃん、いいかい?」

「仕方ないわね。じゃ、私も」

 鳶野さんが待ってましたとばかりに冷蔵庫を開け、ヱビスビールの瓶と枝豆を持ってきたわ。
 
「午前中に茹でておいたんだ。それじゃ、花火はまだだけど、かんぱーい」

 窓の外がゆっくりと暮れていく時間になっていた。この夏の最後の花火を見に行こう。
 
(続く)

《1Point》
前回と同じですが、

・「店舗戦略の決定」:ドメインの決定と考えてよいでしょう。つまり、戦場を決めるということです。

 (1)市場機会探索:簡単に言えばニーズを見つけること
 (2)ポジショニング:差別化を明確にすること
 (3)コンセプトの構築:それぞれを統合すること
 (4)方向性の決定:将来を見据えること

 マーケティングミックスについても簡単に説明しましたが、これについては、以前も出てきていますので参照ください。