64.店舗戦略「市場機会探索」

(前回まで:ジンの自宅で、由美と雄二に店舗戦略についての勉強会を行っています。SWOT分析などのフレームワークで検討するときには切り捨てたり、割り切ってしまう部分について注意する必要があるという内容でした)

 立地環境などを分析し、機会や脅威、課題などを抽出するという基本はしっかりしなければいけないという結論だった。
 
 ジンさんが、一息入れて窓を開けにいった。ふと見ると、大きな机と書棚が見えた。さすが勉強家なのがよくわかるわ。
 
「ジンさん、あの大きな写真は大会の写真?」

 机の上の壁にはパネルの写真や賞状のようなものが並んでいた。

「あ、これね。高校時代の花園の入場式の写真だよ。数少ない自慢だから近くで見てもいいよ」

 お言葉に甘えて、隣の部屋に移動した。
 
 確かに、入場行進の写真だ。小学生が高校名の入ったプラカードを掲げ、先頭の人が優勝旗みたいなものを持っている。

「もしかして、これジンさん。そうだ。若ーい」

「照れくさいなあ。今考えれば、晴れ舞台だよね。この時は、みんなの行進の足が合わないことを気にしすぎて、プラカードに遅れてしまったのが、懐かしいよ」

「ジンの絶好調の時だな。俺も応援に行ったぞ。3年時は1回戦で負けてしまったけどな」

「苦い思い出だな。今ではいい思い出だけど」

「そうっか。高校まで同級生だったんだものね。いいなあ。ずっと、大人になっても昔の思い出を話せるのがうらやましいわ」

「由美ちゃんの同級生は東京にいないの?」

「親しかった子達はほとんど地元ね。何人かは東京へ来ているはずなんだけど、まだ会ったことはないの。地元での同窓会の話が来てるから、その時再会できるかもしれないなあ」

 このまま、思い出話で過ごしたいと思ったけど、そうもいかないわよね。
 
「さあ、ジンさん、鳶野さん。続き続き。早くしないと、花火に間に合わないわ」

「由美は厳しいなあ。冷蔵庫からビールを出して、卒業アルバム鑑賞しようと思ったのに」

「鳶野さん、もうちょっとガマンしましょう。せっかくジンさんがメインの店舗戦略を説明し出したんだから」

 ダイニングに戻って、ジンさんの記入した紙を見直した。
 
 「環境分析」
   ↓
 「店舗戦略の決定」
 (1)市場機会探索
 (2)ポジショニング
 (3)コンセプトの構築
 (4)方向性の決定

「それじゃあ、由美ちゃんに叱られる前にざっと説明をするよ。ここでの目的は、店舗戦略の方向性を決定すると言うことだ。つまり、全体的なビジネスモデルを作るときに説明したドメインを具体化すると考えてもらえばいいだろう」

「ドメインっていえば、あれよね。『誰に』『何を』『どのように』を書き出せばいいのよね」

「『誰に』でターゲットを絞る、『何を』で提供するサービスなどを明確にする、『どのように』で差別化をはかる、というのが基本だね。環境分析に何度も戻って考えるんだ。自分たちの強みは何だろう。その強みを活かした時、喜んでくれるお客さんはどんな人たちだろう。喜ぶお客さんにとって一番重要なことはなんだろう」

「堂々巡りみたいだな。でも、誰に、何を、どのように、というフレーズは何度繰り返しても課題になる。本当にターゲットとして考えた人たちが買ってくれているのか、自分たちが考えた利便性をそのまま受け取ってくれているのか、我々にとってこれが最大限か、ってな」

「雄二のその問いはそのままコンサルに使いたいぞ。常に、問い続けることが経営だと思うんだ。だから、自社にとっての問いかけの言葉は重要だと思う。雄二の会社が、その問いかけに本気で取り組み続けられるかどうかが成長できるかどうかを決めるだろうな」

「よし。事務所の入り口に書き出しておこう」

「そして、社長室には答えを書き込めるようにしておくといいな。さてと。1番目の『市場機会探索』は判るね。ドメインのスタートであるニーズを見つけるということだ。SWOTで言えば、まさしく外部環境の『機会』になるわけだ。そして、何度も言うように、『脅威』に分類したものにも『機会』が隠れているかもしれないと言うことを忘れないことだ」

 市場機会はどんなところにも潜んでいるから、割り切らず、何度でも検討し続けること、ね。

(続く)

《1Point》
・「店舗戦略の決定」:ドメインの決定と考えてよいでしょう。つまり、戦場を決めるということです。

 (1)市場機会探索:簡単に言えばニーズを見つけるです。
 (2)ポジショニング
 (3)コンセプトの構築
 (4)方向性の決定

 由美の視線にしたせいか、遅々として進みませんが、一応、単純な知識ではなく、注意点を入れているつもりですのでおつきあいください。
 店舗戦略としていますが、基本はどんな事業でも同様だと思いますので、自分の仕事を思い浮かべて見ていただければ違った見方が出てくるかもしれません。