62.店舗戦略「立地創造」

(前回まで:ジンの自宅で、由美と雄二に店舗戦略についての勉強会を行っています。経営理念の明確化から環境分析という原則的な流れです)

 外部環境の分析として、特徴的なのが「立地環境」という説明を受けて、なるほどなあと思った。お店というのは、お客さんに来てもらわなければどうしようもないけど、行きづらい場所ではどんなに魅力的でも続けるのは難しいものね。
 
「ジンさん、立地が大事なのは判ったわ。でも、お店を始めてしまってから、周りが変わってしまうこともあるわよね。駅の反対側に大型ショッピングセンターが出来るという話が出ていて、商店街が大騒ぎしているみたいなの」

「由美ちゃん、その話は大森さんから詳しく相談されたよ。これは大きな脅威だけど、反対だけしていても問題は解決できないという話をしているんだ。再開発計画らしいので、流れは出来ていると思う」

「そうなのよ。元々、立地を考えて出店してもこんなこともあるって言うことね」

「そうじゃないな。外部環境は変化することが当たり前と考えなければいけないと言うことなんだよ。最初に環境分析したら終わりなんて経営はありえない。だから、戦略というものも常に変化しなければいけない。内部環境である経営資源をフルに活用し、自らが変わるために、環境分析をし続けるということが大事だね」

「P-D-C-Aというものも、回転させることに重要な意味があったな。ジンのいつも言っている変化を当然と考え、変化を利用することが継続企業の条件だという話に通じるわけだ」

 鳶野さんが判りやすく言ってくれたと思う。最近の鳶野さんは、随分落ち着いてきたのも会社経営を始めたからかな。

「P-D-C-Aって、プラン・ドゥー・チェック・アクションだったわよね。そうかあ。出店するときだけでなく、立地という視点で変化を見なければいけないってことなのね」

「環境分析というのは、それ自体が経営の目といえるかもしれないね。それでは、その目を使って、外部環境を見、自社の内部環境を分析したら、次は何をすべきだろう」

「目で見て、そして頭を使って考える。つまり、店舗戦略を考えるということだろうな」

「雄二は流れが見えてきたようだな。それじゃ、今の話を判りやすく進めるために、立地環境から立地戦略を立てていくことを考えてみよう。この辺は、教科書的に勉強してみよう」

 ジンさんが、余白に「立地選定、立地適応、立地創造」と記入した。

「環境分析に戻るけど、立地環境を分析したとして、出店時にすることは『立地選定』だ。この時、実際には店舗のコンセプトや顧客ターゲット、商圏データや競合分析など様々な分析を複合的に考えなければいけない。しかし、都合のいい立地場所というものは空いていないのが普通だよね。当面の変化を見越すことで、ある程度の妥協は必要になるだろう」

「了解。場所は決めたとする。経営者にとって、一番の投資がこれだろうから、経済的にも次に出来ることは限られてくるんじゃないか」

「そうだ。だから、『立地適応』を検討して、プロモーション戦略などを駆使して、お客さんを呼び寄せる工夫が重要になるね。それと、もう一つ『立地創造』という取り組みも必要になる。文字通り、立地環境を創造してしまうということだ」

「ええ?天地創造?そんなことできるの?」

「由美ちゃん、立地創造。別に神様じゃなくても出来ることがあるんだ。つまり、現状のままの立地環境を変えて行くにはいろいろな手段がある。たとえば、商店街が鉄道の駅を中心に人の流れを考えていたのに、住民が郊外へ移り、鉄道を利用しなくなってしまったとする。良くある話なんだ。個別の店ではどうしようもないけど、商店街で空き地を利用して共同駐車場を作ったり、自治体を動かして、商店街と住宅地の巡回バスを運行するなどと言う活動をしているところもある」

「環境を受け入れるだけじゃなく、変えていくという活動も重要ということね」

(続く)

《1Point》
・立地環境分析の利用

 1)立地選定
 2)立地適応
 3)立地創造

 立地創造という大きなテーマは、元々、鉄道会社のような大資本が行っているイメージが多かったのは確かです。
 
 私鉄などは、中心駅に自社の百貨店を置き、郊外の住宅地へ鉄道を伸ばすとか、沿線に様々な施設を誘致するという鉄道を軸にした立地創造戦略を行っているとも言えるでしょう。