(前回まで:イノベーションの機会について学んでいます。1つ目が予期せぬこと、2つ目がギャップを見つけることにありました。)

 お客さんの入れ替わりの時間になりつつあった。
 早い時間から来ていたグループが会計をする頃になって若いサラリーマンが顔を出す。客商売にとって、このタイミングをコントロール出来たらまさにイノベーションかもしれない。
 
「3つ目もいっていいかな?」

 新しいお客さんに対応していた大将と由美ちゃんが落ち着いてきた頃、そろそろ自分も帰る時間が近づいてきたことに気づいた。
 
「ジンさん、申し訳ないですねえ。時間も遅くなりましたけど大丈夫ですか?」

 大将が気を使ってくれる。

「たぶん、特に重要なのは3つ目くらいまでなので、そこまでは説明しておきたいんです。4つ目以降は、大きな流れになるので別の機会にしますよ」

 由美ちゃんも注文取りが一段落だが、お客さんがいるので、カウンターの中から耳を向けている。

「3つ目の機会として挙げられているのが、ニーズを見つけると言うことです。一番最初に出そうな機会ですが、ドラッカーは3番目に持ってきています」

「そうよね。ニーズって言えばビジネスプランだってニーズを発見することから始めたわ」

「うん、そうだったね。でも、ニーズの前に、すでに存在しているものが、予期せぬ成功や失敗、そしてギャップだから、まずは身近なところから始めると言うことだと思うよ。ニーズというものは、ある意味得体の知れないものだからね。エジソンが電球を発明したのも、ニーズを明確に捉えることができたからだと言われている」

「そうかあ。ニーズは、まだ、自分の会社や仕事の中に表れていないものという考えね。たぶん、ニーズというのはお客さんが持っているものね」

「そうだね。必要は発明の母と言うように、具体的で無ければいけない。利用できるニーズにもいくつかの種類があるといっているのだ。プロセスニーズ、労働力ニーズ、知識ニーズなんだけど複雑になるので今回は止めておこう。ただ、ニーズは発見したと思っても良く検討する必要があるとも言っていることは紹介しておくね。」

「ニーズってよく言うけど、本当にそのニーズが満たされたら喜んで買ってくれたり、お店に来てくれたりするのかどうか心配だと思うの。鳶野さんの会社を考えているときも、意見はいろいろ言ったけど、仕事にするとなったら心配よね」

「ドラッカーもそれを言ってるんだね。つまり、そのニーズを自分たちが本当に理解しているのか、そのニーズを満たすための技術は自分たちが持っているのか、そして、提供する解決策は、それを求めている人たちの使い方とか考え方と一致しているかということを何度も検討するということだ。ニーズを見つけたと有頂天になっても、それは限定的なものであることが多いんだ。だから、ちょっとずれてしまうとまったく相手にされないという失敗を招くことになってしまう」

 大将も由美ちゃんも頷いてくれている。
 そう言えば、雄二の起業した会社もそろそろ成果とニーズの再検討をする時期かもしれない。
 
 今週末、電話してみるか。

(続く)

《1Point》
 今回は、ニーズまでにしておこうと思います。
 以下の4つ目の機会から見てもらえばわかるように、機会を見つける場所が外側の世界に広がっていきます。企業においては重要ですが、正確な検討が難しくなり、不確定要素が大きくなってきます。

 ニーズの3つの種類と前提や条件を続けるべきなのですが、別の機会に流れを捉えて説明したいと思います。その時まで、お待ちください。
 
・イノベーションの7つの機会

第一が予期せぬことの生起である
第二がギャップの存在である
第三がニーズの存在である
第四が産業構造の変化である
第五が人口構造の変化である
第六が認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化である
第七が新しい知識の出現である