54.更生手続き

(前回まで:売上追求型か利益追求型かという話題でした。利益は次への原資であり、リスクは対応するもので回避するものではないというのが共通認識となりました。)

「いらっしゃませ。あ、ジンさん、いらっしゃい」

 由美ちゃんが飛び出すようにカウンターから乗り出している。

「あれ?大将いないの?」

「ちょっと商店街の集まりが長引いたらしいの。でも、もう帰ってくるはずよ」

「最近は、由美ちゃんが1人でも店を切り盛りできるから、大将も楽になったんだね」

「まだまだよ。刺身は切れないし、やっと焼き魚の飾り包丁を入れさせてもらえるようになったところなの」

 生ビールを注ぎながら答える姿が板についてきている。

「遅くなっちまいました。ジンさん、いらっしゃい」

 大将が急いでいる風でもなく帰ってきた。

「由美ッペ、マグロの赤身を平造りしてジンさんに出してくれるか?ジンさんのお通しにするから」

「ジンさん、実験台かな。ちょっと待っててね」

 大将が奥から着替えて出てきた。

「由美ッペもそろそろ包丁使えるようになってきたんでジンさんに食べて貰おうと思ってね。まだ、金は取れないけど」

「大将も楽になりそうですね」

「あいつもそろそろ独り立ちさせなくちゃいけませんからね。最近倒産が増えてますから手に職をつけさせて、いざとなったらどこかの小料理屋にでももぐり込ませることも考えなくちゃね」

「世界不況の影響が出ているんでしょうかね。でも、ここは大丈夫ですよ」

「今日の集まりで会員の取引先の倒産の話で揉めましてね。精算だとか、再建だとか、何がなにやらわからずに聞いてましたよ」

「倒産というのは法律用語じゃないですから混乱するのかもしれませんね」

「へえ。じゃあ、普通倒産と言っているのは別の言い方があるんですか」

「そうですね。一般的に倒産したというのは、手形や小切手の不渡りを繰り返して銀行取引停止処分を受けた時に言う場合と倒産手続きの申立がされた時などに言われますね」

「不渡りの話は時々聞きますね。2回やると銀行取引停止になるって言いますね」

「そうです。一度不渡りを出してから6ヶ月以内に再度不渡りを出したときに停止されてしまいます。あとは、破産手続きと更生手続きなどの法的整理や任意整理なども倒産処理と言われます」

「更生手続きって言うのは、よくニュースで言っている会社更生法というやつですかね」

「もう一つ、民事再生というのもあります。会社更生法というのは、株式会社だけの手続きです。再建の見込みがある株式会社を破産を避けながら整理していくものです。それに対して、民事再生は、株式会社以外の法人や個人でも対象になる点が違います」

「へえー。うちなんかでも民事再生手続きが可能と言うことですか」

「そう言うことになります。破産してしまうおそれがある場合には債権者からも申し立てることが出来ます」

 最近、本当に倒産関係の話が多くなっている。ただ、破産と違って何らかの債権放棄などを得ながら、再建を目指すステップであると考えてもいいと思う。
 
 でも、みやびにはその恐れはないだろうな。
 
(続く)

《1Point》
・倒産処理は任意整理(私的整理)と法的整理がある
・法的整理には、精算型(破産手続き・特別精算)と再建型(会社更生手続き・民事再生手続き)がある

 今回は、再建型の法的整理の特徴を簡単に見ましょう。
 
[会社更生手続き]
 ・会社更生法による株式会社限定の手続き
 ・申立:
 1)「事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができない」時に、当該株式会社から申立が出来る。
 2)「会社に破産原因が生じるおそれがある」時には、当該株式会社に加えて、資本の10分の1以上の債権をもつ債権者や議決権の10分の1以上をもつ株主が申立をすることが出来る。

[民事再生手続き]
 ・民事再生法に基づく手続きで法人のみならず個人でも対象になる
 ・申立:
 1)「破産原因事実の生じるおそれがある場合」には、債務者のみならず債権者からも申立が出来る。
 2)「債務者が事業の継続に著しい支障をきたすことなく、弁済期にある債務を弁済することが出来ない場合」は債務者が申し立てられる。