52.組織編成の基本原則

(前回まで:OEMを受ける場合のメリット・デメリットについて一般的な項目を挙げました)

 休日にみやびへ行くのは久しぶりだった。
 
 平日は仕事帰りのサラリーマンで賑わっている路地だが、土曜日ともなると若干寂しい。
 
「いらっしゃい。ジンさん毎度」

 雄二はすでに着いていた。
 白いポロシャツから筋肉が溢れるような身体をのけぞって、「よお」とカウンターを指し示した。
 
「今朝はすまなかったな。煎餅屋の親爺は喜んでいた。息子と話し合うきっかけになったようだ。今日は来られないけど、今度息子も一緒にジンに会いたいと言っていたぞ」

「そりゃ良かった。どうも、息子が反対しているというのが気になってたんだ。同族企業というのは組織原則が乱れてしまうのでワンマンに成りやすいからな」

「ん?来たな。組織原則って言うのは何だ?ワンマンに成りやすいのはわかるが」

「とりあえず飲ませろ」

 合図をするまでもなく、由美ちゃんが生ビールを持ってきた。お通しにはそら豆のサヤ焼きだ。
 
「とうとう、そら豆の季節になったんですね。夏ももうすぐだ」

 大将がカウンターの向こうから返事を返してきた。
 
「もう少ししたら枝豆も出てきますよ。ここんとこ、暑くなったり、寒かったり安定していなかったですから、そら豆で季節を感じようかと思いましてね」

 サヤから外して口に入れるとホクホクとした歯触りに感激した。

「うまい。早速ビールだ。雄二、大将、由美ちゃん、かんぱーい」

「何、慌ててるんだ。まあ、それにしても、このそら豆はうまいなあ」

 ジョッキの半分を飲み干して落ち着いた。
 
「さてと、組織原則だったな。ジョッキをおいて聴けよ。組織というのは言うまでもなく複数の人間で構成されている。これらの構成員の協働を前提にしているから基本的な原則によって管理しようとするわけだ」

 そら豆とジョッキを往復してから続けた。
 
「管理原則とも言われるのが組織編成の4つの基本原則だ。4つというのは

(1)専門化の原則
(2)権限・責任一致の原則
(3)命令一元化の原則
(4)統制範囲の原則

ということになっているんだ」

 雄二の目が次を急かしている。

「まず、

(1)『専門化の原則』は、組織の職能を分割し、構成員は出来る限り単一の職能に従事することで効率かつレベルの高い成果をあげるべきだというものだ。

(2)『権限・責任一致の原則』は、各構成員の権限と責任は等しくならなければいけないという原則になる。

(3)『命令一元化の原則』では、組織目標に集中するには命令系統が一つであることが必要だという考え方だ。

最後に、
(4)『統制範囲の原則』とは、管理(統制)する部下の範囲を限定することによって管理効率を上げるという考え方になる」

「うーん。わかるような、わからんような原則だというのが正直な意見だ。まず、専門化が効率的ではあるはわかるが、単純作業位だと思うけどな。他も、なんか現在の組織の現状と離れているような気がするぞ」

「雄二、それは、正しい指摘かもしれない。これは少し組織を閉鎖的に考えている原則だと思う。問題点もある。例えば、分業化は部門間の壁を作ったり、全体効率とは逆に動いたりすることも考えられる。まあ、まずは、この原則に従って組織編成をし、成熟したら柔軟に対応する程度に考えた方がいいかもしれない。特に問題は権限と責任だと思う。」

「そう言えばお前がよく言ってるな。人は役割によって変わるんだってな。それが権限と責任の問題だな」

 最近遠ざかってしまったラグビーのチームメイト達を思い出した。人は目標と役割に納得するといきなり変わる。弱小チームが強豪にすら変われる。それがチームという組織の魅力だった。
 
 そら豆が無くなった頃から日本酒に替えた。

(続く)

《1Point》
・伝統的組織論の4つの組織原則

(1)専門化の原則
(2)権限・責任一致の原則
(3)命令一元化の原則
(4)統制範囲の原則

 伝統的な組織論と捉えてください。
 しかし、(2)の権限・責任の一致については、常に原則として捉えてもいいと私は思っています。
 他の原則は必ずしも守るべき原則ではなくなってますね。
 製造業でのライン生産からセル生産方式への移行、マトリクス組織などに見られるように組織自体変わってきています。
 
 ただし、組織を見る場合の視点としては、この4つの原則は重要です。この原則がどうなっているかで組織形態の分類を行ったり、問題点を抽出したりする切り口となります。