51.OEM

(前回まで:切り口の視点として、経営資源とプロモーションミックスを取り上げました。基本の復習と考えてください)

 ゴールデンウィークも過ぎ、時折初夏の日差しを感じる頃となっている。
 久しぶりに予定のない土曜日だったこともあり、朝食前にランニングシューズを履いた。

 河川敷のジョギングコースにはいると、いつの間にやら色とりどりのジョガーで溢れている。季節が変わる時期には、彼らのウェアが色を添えてくれる。
 
 1時間くらい汗を流し、朝食を取っていると電話が鳴った。久しぶりの雄二からだった。

「時間がないんでかいつまんで話すと、異業種交流会で出会った煎餅屋の社長から相談を受けてるんだ。結構がんばっていて自社ブランドで商品開発もしているらしい。製造能力も設備投資で大きくなってるんだが、ここのところ注文が伸びず苦労しているところへ、大手製菓会社から『オーイーエム』での製造打診があったというんだ。社長は大喜びなんだが、開発担当をしている息子からは反対されているそうだ。いいアドバイスが欲しいそうなんだ。ジン、頼む」

「相変わらずな奴だなあ。経営判断の問題にそんなに安易に答えられるか。OEMの契約条件によっても変わってくるぞ。製造の余力と打診の製造量や納入条件、価格条件などがわからないと具体的なアドバイスは無理だ」

「大丈夫だ。まずは、そのオーイーエムってやつの一般的なメリットとデメリットを教えてやりたいんだ。ところで、俺は仕事に出なくちゃいかんので、その辺をメールで頼む」

 あわただしく電話は切れた。
 まあ、どちらも緊急だと言うことはわかった。朝食を片づけるとメールを作成した。
 
「とにかく、一般的なメリットとデメリットということだぞ。中小企業だと今後の命運を左右するかもしれないので気をつけてくれよ。念のためだが、OEMというのは、相手先ブランドの製造と訳される(Original Equipment Manufacturing)

【メリット】
(1)安定した生産量の確保、設備稼働率の向上→製造単価の低減を図れる
(2)相手先のブランド力が利用できる
(3)相手先の販売力が利用できる

【デメリット】
(1)自社技術流出の恐れ
(2)自社のブランドが育たない
(3)自社の販売チャネルが育たない
(4)相手に価格主導権を握られる恐れ
(5)最終ユーザーの情報が直接入らない

 心配なのでデメリットを多めにしたが、要は、契約の自由度がどの程度あるか、自社の目指すべき姿にとって有効かどうかを良く考えることが大事だと思う。
 特に、息子が反対しているという点は気になる。良く反対している内容を検討すべきだと思う。
 
 なんか、雄二の安請け合いのような気がするが、出来るなら一度会って話がしたい。 ジン」
 
 取り急ぎ、教科書を写したような返信とした。
 最近は、大手スーパーやコンビニが自社のブランドに統一したプライベートブランド製品を安く売ることが流行りのようだ。これもOEMの一種と言える。
 
 特に、今回の場合、自社ブランドを開発できる力がある企業であることがポイントになるだろう。長期的に見るとデメリットが強くなってくるかもしれない。
 
 しばらくして返信があった。

「サンキュー。お前の紹介をしておいた。今晩、みやびに行くがどうだ」

「了解。その時に具体的に話そう」

 夜の予定は埋まった。
 
(続く)

《1Point》
・OEM(Original Equipment Manufacturing)
  相手先ブランドによる製造、他社ブランドの製造

 なぜか、中小企業診断士の試験では、このOEM依頼への判断が出されることが多いように感じます。メリット・デメリットを直接回答するという試験もありました。

 ポイントは営業が不要になるということと、自社ブランドが育たないということになると思います。