5.ビジネスモデル仮説

(前回まで:起業を目指す雄二の質問からコンプライアンスに悩む近藤さんの会社の診断・コンサルを依頼されたのだった)

 雄二への宿題と近藤さんからの依頼が今夜の成果品というところだった。
 
 大森さんも近藤さんもいつも通り2時間弱で帰って行った。

「雄二、そろそろ帰るか」

「おう、そうだな。北野仁先生の宿題もあるしな」

「鳶野君、良い感じだね。ところで、何をするのか覚えているんだろうな」

「ビジネスプランを立てるために、ビジネスモデルを具体化するんだったな。まずは、誰をターゲットにするか具体的に考えて・・・どうするんだっけ」

「今回の場合、仮説を立てて検証するつもりなんだ。そのために、思いついたアイディアを利用する人をいくつかのパターンで想定してみたい。たとえばだな、5W1Hで整理するとわかりやすいかもしれないな。

 だれが(Who)、
 いつ(When)、
 どこで(Where)、
 なにを(What)、
 なぜ(Why)、
 どのように(How)、
 
という項目で、そのアイディアを利用するシーンを想像しながらいくつか書き出してくればいい」

「ターゲットを決めろと言う話が、いきなり、長い文章の宿題に変わったな。5W1Hって言うのは、作文の書き方じゃなかったか?」

「そうさ。だから、ダブりやモレがなくなって、雄二でもまとめやすいはずだ。ターゲットを『だれが(Who)』に置けば、いくつかのパターンが考えられるはずだろ。20代のOLとか、団塊の世代の男性とか、イメージがまとまりやすいターゲットを決めて、具体的に、雄二のアイディアを使うシーンを書き出すんだ」

「まあ、やってみるか。今の話をメールしておいてくれよ。忘れそうだから」

「仕方ない、簡単な話だと思うんだが。とにかく、具体的な映像を作り出すようにして書き出してみてくれ」

「ふーん。2人とも本気なのね。でも、おもしろそうだから、私にも教えてね」

「そうだなあ。会社ができたら、由美ちゃんを秘書にしてやってもいいぞ」

「ええー・・・どうしようかな。なんか、いやらしそうだし」

「こら!いやらしいとは聞き捨てならん。社長夫人にでもしてやろうと思ったが止めた」

「鳶野さん、それって、告白?」

「バカ言うな。告ってなんてないよ。由美ちゃんも最近言うようになったなあ」

「はははは。2人で漫才でもやってろよ。由美ちゃん、早まるとどん底の生活になるから気をつけた方がいいぞ。身体がでかい分、密度が低い」

「ジンまでか。まったく。前途洋々たる青年をいじめて何がおもしろいんだか」

「でも、鳶野さん、ジンさん。私ね、会社作るのって、興味あるんだ。そのビジネスプランを作っていく過程を教えて欲しいな」

「へえー。由美ちゃんがそんなところに興味を持つなんて思ってもみなかったけど」

「うーん。だって、このお店だって会社みたいなもんじゃない。おじさんが一人で作り上げたわけだけど、これから、大きくしていくんだったら、勉強した方がいいでしょ」

 大将の眼も点になっている。
 
「おいおい、由美ッペ。この店をチェーン店にでもするんじゃないだろうな。店主に相談くらいしてくれよな」

「おじさん。この際だから、ジンさんに指導してもらって、この店を日本一にしましょうよ」

「・・・」

 みんなで、呆気にとられた。
 
「おじさんって、自分の好きな日本酒を、大事に大事に、お店に出してるじゃない。お店にきているお客さんも、そんなおじさんの気持ちを大事に受けとめているから、いいお店になってるのよ。そこが、他のお店と全然違うんだから、もっと、たくさんの日本酒好きがこの店に来るようになれば、みんなファンになるはずよ」

「・・・由美ちゃん、もうすでに、きちんとこの店のマーケティングをしてるよ。参ったね」

 灯台もと暗しだ。居酒屋「みやび」をじっくり考えたことがなかった。
 
 改めて、店の中を見回してみた。
 
(続く)

《1Point》
・ビジネスモデルの検証
 ビジネスモデルを作り上げるのに王道はないということですが、今回は、ビジネスアイディアから形作っていいくことを想定しました。
 
 (これまでの話の流れ)
 
 ビジネスアイディア
    ↓
 ターゲッティング(ターゲット明確化)
    ↓
 ビジネスモデル仮説策定
    ↓
 ビジネスモデル仮説の検証
    ↓
  (Next Step)