48.3Sの原理

(前回まで:企業のパンデミック対策として、すでに対策を行っている企業の事例を上げました。この事例は、私の想像の産物ではなく、実際の企業で行われ発表されている内容です。いかに意識の差があるかという実例ですね)

「いらっしゃい。ジンさん、毎度」

「大将、相変わらず気合いが入っていますね」

「そりゃ、ウィルスなんかにゃ負けないように気合い入れてるんですよ」

 由美ちゃんも心配そうにやってきた。
 
「ジンさん、大丈夫なのかなあ。テレビでは、豚インフルエンザの話が報道されているわ。鳥インフルエンザじゃなかったけど、随分死者も出てるみたいね」

「うん、そうだね。豚インフルエンザも、人から人へうつるようになると、これまでのものと変異している可能性があるから、通常のインフルエンザだと思っていたら大変なことになるね」

 常連の大森さんと話をしていた近藤さんが向き直って声をかけてきた。
 
「北野さん。先日のパンデミック対策事例、ありがとうございました。危機対策室の連中も大喜びでした」

「そうですか。良かった。あの事例企業は、ある意味、先駆的な企業ですから、すぐにマネをするのは難しいですよね。一緒に送った業務プロセスの合理化と見える化については何か言ってましたか」

「そうそう。合理化自体はいろいろなやり方が公開されていますから、何とかなると思ったんですがね。現場より、事務方の業務にどう手をつけたらいいのか、議論になってましたね」

 先日、近藤さんの会社に、パンデミック対策の事例と一緒に、重要業務を継続するための考え方として、業務プロセスを見直し、マニュアル化するためのチェックリストを送っておいたのだ。

「そうですよね。QCサークルやカイゼンなんかは、日本企業の専売特許みたいなもんですからね。でも、ホワイトカラーのカイゼンは、あまり特効薬ができてないというのが現実です」

「事務方はスタッフも多いし、業務もルーティーン業務と緊急対応が交錯したり、多方面からの情報が集まってから初めて動けるようになったりしますからね。どうしたらいいですかね」

 知識労働者とも言われるホワイトカラーの業務は、コンプライアンスや内部統制、内部監査・外部監査の厳密化などで生産性は低下していると言われている。そして、その状況が「見えない」ことも問題点として指摘はされているが、企業が大きくなればなるほど、管理部門や総務部門の肥大化が進んでいるようだ。
 
「何かきっかけになる切り口を考えてみましょう。まずは、3Sなんてどうですかね」

 由美ちゃんがキョトンとしている。

「3Sって知ってるわ。整理・整頓・清掃でしょう。でも、それは話が違うわよね・・・」

「ははは。略語は同じものが複数あったりするから危険だよね。その3Sがあったね。工場や工事現場などでは、更に付け加えて5Sと言われる奴だね。整理・整頓・清掃・清潔・躾で5つのSだ。でも、今回は違うよ」

「すると、どんなSなんですか」

「危機対策室のメンバーに伝えてください。まずは、仕事を単純にしてみてください。Simplificationですね。無駄がないか、二度手間になっていないかという目で業務フローを検討してみるといいですね。

次に、標準化しましょう。Standardizationが二つ目のSです。具体的には、マニュアル化するという目標でいいでしょう。

三つ目のSは、Specializationです。標準化して誰でもできるようにするのですが、どうしてもキーになる業務というものが見えてきます。重要なポイントなら、専門化することで差別化になるし、誰ができるのかを明確にすることにも繋がります。

このように、あまり複雑でない切り口で合理化を検討してみると、新たな発見もあるかもしれません。まずは、シンプルに、です」

「なるほど。3Sで検討するようにアドバイスしてみます」

 大将がいたずらっ子の目で口を挟んできた。
 
「うちの3Sを思いつきましたよ。酒(Sake)飲んで、笑顔で(Smile)熟睡(Sleep)なんてどうです」

「ええ・・・まあ、いいんじゃないですか」

(続く)

《1Point》
 切り口というのは、自分で使いやすいものをいくつか作っておきましょう。
 
 今回紹介した合理化の3Sは、生産現場で使われるものですが、考え方は事務の現場でも同様です。

・合理化の3S
1)単純化(Simplification)
2)標準化(Standardization)
3)専門化(Specialization)

 切り口が重要なのは、何かをまとめていくときに、モレやダブりを防ぐ必要があるからです。日常業務でもそうですが、特に、中小企業診断士の2次試験では短時間で対応しなければいけません。
 自分で常に切り口を意識するようにしましょう。