43.企業事例の見方

(前回まで:財務諸表分析のうち、生産性分析について説明しました。一般的に、労働生産性と資本生産性で見ていきます)

【復習】
・生産性分析
 ・労働生産性=付加価値額/平均従業員数
 ・資本生産性=付加価値額/有形固定資産

 春の嵐と共に花粉症に悩んでいる人たちのマスク姿が風物詩となっているようだ。
 朝の通勤電車の中は、コートが薄くなった分、マスクが目立つようになってきている。
 
 今朝起きがけにメールチェックをするとアメリカのビジネススクールへ留学している長井沙知からメールが入っていた。初めてのメールだったのだが、内容はそれほど心躍るものではなかったのが残念だ。

「ジンさん、ご無沙汰しています。

由美さんとのやり取りで直接メールしてもいいと言うことでしたので、図々しく送りました。

日本を発つまでジンさんが経営コンサルタントの顔を持つなんて知りませんでした。

こちらのビジネススクールでは、ケーススタディ中心なのですが、やはりアメリカのケース中心で、日本的な感覚からするとちょっと違和感があります。ぜひ、日本的なというのか、日本の事例でのケーススタディに取り組みたいと思い、ジンさんにご意見を頂きたいのです。

由美さんから聞いたところ、みやびの常連さんの関係で、建設会社や建材屋さんのコンサルをしているそうですね。是非、参考にさせてください」

 沙知は、情の経営者と言われた長井誠二によって育てられた経緯があり、彼の支援でビジネススクールに留学しているのだ。まだ、行って間もなく、英語での意思疎通に四苦八苦しているという。
 
 彼女から一つの簡単な事例についての宿題を例として送ってもらった。その企業のこれまでのストーリーが示されていた。
 
 せっかくなので、事例を検討し、改善提案をするプロセスについて、ざっとまとめて、特に中小企業を見る場合の方向性を示してみた。
 
 今日、仕事が終わったら再チェックしてメールしようと思っている。
 
1.事例の読み解き方の方向性(内部環境)

 事例のストーリーには、過去の経験が記録されている。SWOT分析のS(強み)、W(弱み)を意識しながら、その企業のコアコンピタンスを抽出する。

2.外部環境とのギャップ

 過去からの意思決定の積み重ねが、環境変化にあって機能障害を起こしている部分を発見する。
 
3.コアコンピタンスと外部環境の変化に着目し、今後、この企業が闘うべきドメインを再確認する。
 1)顧客は誰か(Who)
 2)その顧客に提供すべき製品・サービスは何か(What)
 3)どのような強みを持って提供するのか(How)

4.目指すべき姿と現在の問題点を分析し、解決すべき課題として明確にする

*課題解決の方向性のヒント

 ・リソースの少ない中小企業はIT活用でネットワークを活かす
 ・組織形態はフラット化とし、業務プロセスの見える化が鍵
 ・他社とのネットワーク:コアコンピタンスの相互補完を検討する
 ・顧客価値創造への転換
 ・競争優位→共に創る「共創優位」へ
 
 ここまで考えながら、会社へ向かう電車に飛び乗ったのだ。
 特に、日本的な考えではないが、これからの企業にとって、ほぼ共通するテーマは、ネットワークの強みになるのではないかと考えているんだ。
 
「北野さん、何をブツブツ独り言、言ってるんですか?」

「え?ああ、山野さんか。独り言言ってた?」

「そうですよ。さっきから手を振っているのに気づいてくれないし、近づいてみたら何か喋ってましたよ」

「すまない。ちょっと考え事をしていたんだ」

 気づけば、会社の入り口の横まできていたようだ。
 
*念のためですが、登場人物等はすべて全くのフィクションですので、変に悩まないように願います。
(続く)

《1Point》

 今回の事例の読み解き方は、中小企業診断士の2次試験を意識しました。
 そろそろ、事例を徹底的に解くスタイルを身につける時期ですね。
 実際の企業診断もスタンスは一緒です。強みの具体化であるコアコンピタンスを明確にし、まず、これからぶれないことが一番重要です。(ドメインの設定)
 
 顧客価値をメインにしたドメインの考え方は、今回は、辞書作成プロジェクトにも示しています。公開後確認ください。