41.付加価値額

(前回まで:財務諸表分析の勉強が続いています。収益性を見る指標から各種回転率を学びました。回転率は効率性を見る指標と分類することもできます))

【復習】
・売上債権回転率(回)=売上高/売上債権
・受取手形回転率(回)=売上高/受取手形
・売掛金回転率(回)=売上高/売掛金
・棚卸資産回転率(回)=売上高/棚卸資産
・有形固定資産回転率(回)=売上高/棚卸資産

指標自体は簡単なものですし、覚えやすいものです。あとは、その意味するところと改善する視点を確認しておいてください。

お客さんが入ってくるたびに中断する財務諸表分析講座が続いている。
他のお客さんの注文時が、自分のぐい呑みと肴に手を出せるチャンスというのも不思議な居酒屋だ。自分で蒔いた種ではあるが。

「ジン。そう言えば、この間大森さんに聞いたんだが、会社の子にちょっかい出しているらしいな」

由美ちゃんが注文を取りに行っているときに、雄二がニヤニヤしながら言いだした。

「ぐっ。なんだそれ。山野綾の話だな。ったく、大森さんも話をすぐ大げさにしたがる」

「お、ジンの話を逸らそうとするときの癖が出てるぞ。お前は、話がやばくなると、すぐ斜に構えて考えてる振りをする」

「別に逸らそうとしている訳じゃない。大体、ちょっかいを出そうとするなら、ここになんて絶対に連れてこないさ。すぐ、こんな話になるんだから」

「何々?もうジンさんの講座始まっているの」

「あ、いや。ちょっとこっちの話。落ち着いたんなら、最後の生産性にいこうか」

「ジン。斜に構えているぞ」

「やかましい」

「あ、やっぱり2人でなんか怪しい話をしていたのね」

「それはそうと、生産性の考え方にも怪しい・・・、じゃなかった、別に計算しなければいけない考え方があるんでそこから説明するね」

とりあえず逸らした・・・

「生産性というのは簡単に言うと野球の打率とかチームの得点率と考えてもらえばいいと思う。経営的に言うと、投入した生産要素に対する結果として産出された活動成果の度合いと言うことになるんだ。インプットに対するアウトプットの割合のことだ」

「・・・」

「判りづらいかな・・・例えば、従業員一人あたりどれだけの売上を上げたかというのも広い意味で言えば生産性とも言える。単純に同業者と比較するならこれでもいいはずだ」

「ああ、なるほどな。生産性だから、一人あたり売上が高い方がその企業は生産性が高いといえるわけだ。わかりにくく無いじゃないか」

「雄二、だから単純だと言うんだ。売上には、材料費なんかも入っているわけで、例えば、ほとんどが材料費で、加工が必要ない製品だったら、高い材料をたくさん使えば一人あたり売上高が高くなってしまうだろ。計算する意味がない」

「そりゃそうよね。単純に売上を上げたいなら、高級食材を使って単価を上げればいいものね。売れるかどうかは判らないけど」

「比較したいのは、例えば、人を投入した直接の結果だよね。それを、付加価値と言っている」

「なーるほど。材料なんかは外から持ってくるだけだから、そこに付加した価値が、その企業の生み出した価値というわけだな」

「そう言うわけだ。付加価値というのは、企業活動によって新たに生み出された価値である、というのが定義だったかな。つまり、生産性を見るためには、経営資源である人・モノ・カネ・情報の投入量で生み出された付加価値を割るという計算になる」

由美ちゃんが難しい顔をしながら口を開く。

「ところで、その付加価値って言うのは利益とは違うの?」

「そうだね。利益も当然付加価値なんだけど、それだけじゃない。例えば、材料木材を100円で買ってきて、それをゲタの形に加工することで生活している人がいるとする。そうすると、木材に対して、削る道具とその人の労力を加えた結果がゲタであって、それが150円で売れたとする。道具の費用が10円、労務費が20円とすれば利益は30円となるよね。書いた?」

由美ちゃんが、メモする。

(材料)+(経費)+(労務費)+(利益)=(売上)
100円+ 10円+20円  +30円 =150円

「利益は30円だけど、道具というモノと人を投入して材料に付加したものは何か?と考えてみてくれる」

「お、ジン。判ったぞ。経費や労務費もこの企業で生み出した価値に対する対価だから、売上の150円から材料費を引いた50円が付加価値額になるんじゃないか」

「そう言うこと。材料費なんかは、外部購入費と言ってすでに存在しているものだから付加価値に加えないのは判りやすい。労務費や経費はまさに付加価値だ。つまり、利益がゼロでも経費や人件費を払うことができれば、その企業は付加価値を生んでいると考えられるね」

「利益は無くても雇用を維持している企業はそれだけでも社会的な価値があると言うことだな。確かに、そこに勤めている人たちにとっては、働いた分の給料をもらっているんだから、それ以上の利益を出さなくてもとりあえずは大丈夫だし」

「ただ、いつまでも利益がないとなると、将来への投資ができないことになってしまう。今は何とか雇用を維持していても、将来継続できるかどうかは怪しいと判断されてしまうだろうな」

(続く)

《1Point》
・付加価値額とは?

企業活動の結果生み出された成果を言う。

具体的には、中小企業庁方式と日銀方式の二つの算出式があります。

【中小企業庁方式】
付加価値=売上高-外部購入価値(直接材料費+購入部品費+外注加工費+補助材料費)

【日銀方式】
付加価値=経常利益+人件費+貸借料+減価償却費+金融費用+租税公課

中小企業庁方式は、決算データから算出することを想定しているようです。ただし、中小企業庁での施策等の申請書に使う様式を見ていると、上の算出式ではないこともあります。

例えば、「付加価値額」=営業利益+人件費+減価償却費

と、簡略版の日銀方式とでもいうような注意書きがあったりしますので、考え方として、外部購入費以外の社内で付加した価値と覚えておけばいいでしょう。

中小企業診断士の受験対策としても、現状、付加価値額は問題文で指定しているようですので、考え方が判れば問題ないでしょう。