40.回転率

(前回まで:財務諸表分析のうち、収益性を見る指標に移りました。全体的な総資本経常利益率を分解することで売上高経常利益率・総資本回転率となることは判ったでしょうか)

【復習】
総資本経常利益率=(経常利益/総資本)×100
   =(経常利益/売上高)×(売上高/総資本)×100

1)(経常利益/売上高)×100=売上高経常利益率(%)
2)(売上高/総資本)=総資本回転率(回)

・・・ふと、カウンターの上の下がり壁に青森の新しい提灯がぶら下がっていることに気がついた。

「あ、大将。青森行ったんですね」

「この間の連休に店も休みを取ってね」

 うれしそうに大将が青森の店の様子を説明してくれた。
 雄二はまだ、総資本経常利益率を確認中だ。

「ジン。売上高経常利益率は判るが、この総資本回転率というのはどう判断するんだ。何回転あれば収益性に寄与するんだ」

「ジンさん。この例で計算すると、0.8回転になるのよ。回転と言うんだから、1回転くらいはしないといけないんじゃないかしら」

「そうだなあ。この例は悪いところの多い例なんだろうな。でも、普通は回転数が多い方がいいとは思うけど、バランスが重要だから二つの指標に分解してあるとも言えるんだ。例えば、大型デパートと大型ディスカウント店を較べてみると判るよ」

「ええっと。デパートだと高価格品が中心で都心部に高級感溢れるビルというイメージよね。ディスカウント店だと当然低価格品を郊外の大きいけど内装やディスプレイも簡易的なものね」

「さすが由美ちゃん。良く把握してるなあ」

 雄二が続けた。

「由美分析を使うと、デパートは売上高経常利益率が高いが、ディスカウント店は薄利多売で稼がなければいけない。なるほど、だから、ディスカウント店は固定資産額関係を下げて総資本回転率を上げることを考えないと総資本経常利益率が上がらないということになるんだな」

「デパートでは、総資本回転率は低めにならざるを得ないから、高級品で利益率の高いものに比重を置く必要があるってことなのね」

「最近、生徒が優秀になってきたおかげで楽になってきた」

「そうでしょ。鳶野社長には負けられないわ」

「由美ちゃんを財務担当重役に迎え入れるか」

「そう言うことで、売上経常利益率と総資本回転率の判断も同業他社比較などをすることで意味が出てくると言うわけだ。デパートとディスカウント店を比較してもあまり意味はないと思っていいだろう。ただし、他の業態の強みを取り込むという戦略を取る場合は、バランスを検討するのに役に立つかもしれないな」

「たとえば?」

「思いつきだけど、デパートで扱っている商品を通販などを使って販売するチャネル戦略を取ると売上高経常利益率はそのままで総資本回転率は大きくなる可能性がある。でも、通販で販売することでブランド価値が下がってしまうと結局売上規模が下がってしまい、店舗販売にまで波及しないとも限らない、と言うようにあちら立てればこちらが立たず状態になってしまう。一方だけ考えて戦略を立ててしまうともう一方の指標が反対に振れてしまうということも考えられるということだね」

「やっぱり商売はバランスを考えないと簡単にうまい汁はないということだな」

「この回転率の考え方は、細かい分析をするときに問題を見つけ出す時のツールとして使えるんで、それもついでに覚えておいた方がいい」

 由美ちゃんが慌ててノートを手に取った。
 
「え、何何。他の回転率ってなに?」

「分母を資産の部の項目にすることで、項目毎の他社比較が簡単にできるんだ。例えば、受取手形や売掛金の売上債権回転率は、資金繰りに結びつくので、比較してみるといい。もっと細かく見る場合は、受取手形回転率と売上債権回転率を比較するともっと原因がはっきりする。棚卸資産や有形固定資産なども、どこに問題がありそうか見ていくポイントになるだろう」

「何でもできそうだな」

「簡単に言えば、売上高に対して資産が効率的になっているか、どこかに無駄がないかを比較検討する指標ということだね」

(続く)

《1Point》
・売上債権回転率(回)=売上高/売上債権

 売上債権回転率が悪化した原因を追求するためにもっと細分化してみることも重要です。
 
 受取手形回転率(回)=売上高/受取手形
 売掛金回転率(回)=売上高/売掛金
 
 改善点はどこにあるのかを見つけ出すことが可能となります。
 
・棚卸資産回転率(回)=売上高/棚卸資産

 棚卸資産回転率が下がっているときは要注意です。利益は上がっていても、実は棚卸資産の増加で見かけ上の利益でしかないことがありえます。

・有形固定資産回転率(回)=売上高/棚卸資産

 工場設備などの大きい製造業などでは、投資に見合う売上を上げているかを比較するという視点で見ることになるでしょう。