16.ドメイン

(前回まで:週末、雄二は国会図書館などで収集してきた2次データとSNSで収集した1次データのアンケート調査を持って、ジンの部屋にやってきました。ここで、ビジネスモデル仮説との整合性を確認して、3C分析のフレームワークで環境分析を行いました)

「うまい!」

雄二が満足そうな声を上げた。
環境分析もほぼ大枠が見えてきたので、虎杖浜産のタラコを使ったスパゲッティの昼食にしたのだ。

「これだから独身を貫けるんだな。俺も、ジンがいれば嫁さんはいらんかもな」

「ゲッ。気持ち悪いこと言うなよ。俺は、これでも結婚願望が強いんだからな。当然相手は女だ」

「冗談に決まってるだろう。俺は女好きだ」

「ま、その辺は間違いないだろう。よつ葉バターに虎杖浜産のタラコの北海道スパゲッティだけど、シンプルでも結構うまいなあ」

「タラコがしっかりしてるのがいいな。この間、仕事で釧路に行ったんだが、さすがに北海道の海の幸は絶品だな」

「いつの間に。いいもの食ってきたんだろうな」

「おお。牡蠣だ。季節外れだと思っていたが結構大振りでうまいのがあったぞ」

「そうだなあ。牡蠣と言えば厚岸産が有名だよな」

「ところがだ。飲み屋で一緒になった、何でも、消防団に入ってるおやじが『牡蠣は厚岸より仙鳳趾(せんぽうし)の方が身が締まってうまい』と言っていたんで食べてみたが、確かにうまかった」

「(ゴクッ)このコンサルの成功報酬は仙鳳趾の牡蠣で決まりだな」

「タダだって言ったろうに。成功報酬というのは、事業として成功したらの話だな」

「ちょっと先すぎるなあ・・・」

「だから、早く成功させてしまおう」

牡蠣のイメージが膨れあがってしまった。いかん、いかん。

「気を入れ直して始めるか。環境分析も終わった。いくつか修正点も見つかったし、ニーズの方向性ももう少し広がりを持ってもいいことがわかった。ほぼ出尽くしたし、雄二の頭の中も固まりつつあるだろう」

「こうやって仮説を立てて検証すると、思っていたよりいろいろ見えてくるもんだ。初めに考えていたものとは随分変わってきたかもしれないな。でも、正直言って、自信も出てきた」

「よし。ここまで来ればいらないものを削ぎ落として形にしてもいいだろう。ドメインを明確にしよう」

「うーん。ドメインか。前も言っていたような気がするが、ドメインというとどうしてもインターネットを思い出してしまうな」

「大きく言うと似たようなものだ。インターネットのドメインは、住所みたいなものだな。経営におけるドメインというと、事業を行う領域と差別化できるこだわりというところか。どちらにしても、自社の戦っていくところを明確にするということだ」

「前に言っていた、ターゲットと対応するニーズというところか」

「簡単にまとめると、誰に、何を、どのように提供するか、だと考えればシンプルにまとめられるんだ」

「最初に考えたビジネスモデルの具体化でもやったような内容だな」

「あれは、実際の利用シーンをシミュレーションしてみるためのモデル化だから、また別だ。今度は、企業として存在する領域を決定するんだ。つまり、これまでのビジネスモデル仮説から環境分析までの結果をまとめたものになる」

「了解。判ってきたぞ。『誰に』は、環境分析で見直したCustomerのターゲットになるわけだな。『何を』は、整合性で見直したターゲットのニーズであり、それを目指した俺の提供するサービスだ。最後の『どのように』は、Company(自社)をCompetitorと比較して、見直したビジネスモデルと言えるんじゃないか」

「お見事。ここまで環境分析をしておけば、自然にドメインが設定できる。はっきりと雄二の言葉で書き出してみてくれ」

これまでの集大成のため、雄二も迷いがなくなっていた。例のルーズリーフに大きめの字でドメインと書き込み、その下に3つに分けた書き方で、誰に・何を・どのように活動することで社会に存在を許されるか、を書いた。

無骨な字だが完成だ。

(続く)

《1Point》
・ドメイン

事業ドメインとか、戦略ドメインと言うこともあります。

企業が経営活動を行い、存在し続けるための「こだわり」と「領域」を定義したものです。

一般的に3つの要素によって構成されています。

(1)自社のターゲットとすべき「標的顧客」(誰に)
(2)標的顧客が求めている「顧客ニーズ」(何を)
(3)顧客ニーズを満足させるために、自社の経営資源の強み
で対応する「独自能力」(どのように)

ドメインは、環境が変化してきたら見直すことが重要です。一度決めたら変えないというものではありません。そのために、常に環境分析を行い、変化があれば、再構築の検討を行うべきです。

中小企業診断士の2次試験では、事例を読んだら必ずドメインを書きだしてみることをお勧めします。特に、現在のドメインと目指すべきドメインが違う場合、その間のギャップとなっている「課題」が見つかります。

この課題を解決していくことが、事例問題の一貫したストーリーです。

「仙鳳趾(せんぽうし)の牡蠣」
経営知識ではありません(^_^;)

全国的に有名な釧路の厚岸とはすぐ近くなのですが、厚岸湾の外海に近いところなので、栄養豊富で潮の流れが身の引き締まった牡蠣を育むんだと釧路の海産物卸問屋のおやじ(私と同じ歳の飲み友達)が言っています。

彼が東京にこの牡蠣を送って大試食会が開かれました。なんと、下関からふくも来て大宴会でした。(^_^)b

うまいなんてもんじゃあない味でしたね。

北海道在住当時、厚岸でキャンプをしたことがあります。近くの漁協の直売所で厚岸の牡蠣を買って焼いて食べたのですが、もう北海道に永住だ!と叫んだものです。

仙鳳趾(せんぽうし)の牡蠣は、やっぱり北海道に帰る!!と思わせてくれました。

現在の状況:

『環境分析』←3Cの視点から、調査データ利用(前回)

『ドメインの設定』←今回

『ビジネス構造』←具体的な取引先や流通を関連づける

『ビジョンとマイルストーン』

(Next Stage)